平成222010)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

22−共研−2018

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

3

研究課題名

数学的アルゴリズムにより難易度に差異を持たせた意志決定課題遂行時の前頭前野脳血液量減衰の差異に関する研究

フリガナ

代表者氏名

キクチ センイチロウ

菊地 千一郎

ローマ字

KIKUCHI, Senichiro

所属機関

自治医科大学

所属部局

精神医学教室

職  名

講師

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 コンピュータを相手に長時間のじゃんけん課題を遂行していく過程で、コンピュータのアルゴリズムの手強さにより血液量変化に差異が認められるか否かを調べる目的で研究を開始した。
 これまでの機能的MRI(fMRI)研究では、アルゴリズムの差異により脳活動に変化が認められるという知見が得られていたため、代表者の菊地は平成22年6月20日ヒト脳機能マッピング学会で発表を行った。同時に自治医科大学精神医学教室の近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)測定装置NIRO-200を適正に使用するために測定の準備を開始した。まずは、NIRO-200とデータ収集用のコンピュータとの連携を再確認し、新たに課題提示用コンピュータの設定を行った。続いて、長時間測定に伴うデータに混入するノイズを最小限に抑えるための最適な頭皮上のプローブ設定法を検討した。それにより、かなりノイズを減少させたデータを得ることができたが、それでも混入を完全に避けることは不可能であった。データの最適な解析手法の確立が必要であった。
 そのため、共同研究者の三分一は、まずは、独立成分分析(ICA)を用いて体動に起因すると思われるアーチファクトをデータから除去した。次に、課題の時間を周期とする変動が課題に起因するものと考え、この周波数の値(0.0208±0.01Hz)を中心にバンドパスフィルターを施して課題由来の成分の抽出を行った。さらに、刺激課題遂行中の酸化ヘモグロビン波形の積分値を求めて定量化した後、t検定を用いて、課題による血液量変化の差異を統計的手法により判定する手法を確立した。
 これにより準備は整ったが、まずは、長時間課題の遂行準備段階として、上記の手法を用いて、短時間の課題で難易度により血液変化量に差異が認められるかを確かめる研究を行った。すると、課題の難易度に伴い、血液量変化が直線的に上昇するのではなく、難易度が相対的に中程度の場合に最も血液量変化が大きくなる、すなわち脳活動が大きくなることが明らかになった。また部位としては右の背外側前頭前野にその傾向が顕著に認められた。じゃんけん課題は、あとだし負けじゃんけんという、特に前頭葉機能のうち葛藤条件の処理機能を要求する課題であるが、右背外側前頭前野は葛藤の克服に関連しているという過去の報告を支持する結果となった。この知見は代表者である菊地の指導のもと、松本が平成22年9月4日、自治医科大学シンポジウムで発表を行った。そして、平成23年度初頭に松本により英語論文として投稿予定である。
 これまでは「質的な難易度」による脳活動を調べてきたが、来年度以降は「量的な難易度」に変化を加えた場合の脳活動の変化を検討したい。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1)菊地千一郎、三分一史和、石黒真木夫、藤田晃史、松本健二、山内芳樹、杉本英治、渡辺英寿、加藤敏 :コンピューターのアルゴリズムの違いによるゲーム遂行時の脳活動の変化:平成22年6月20日:第12回 ヒト脳機能マッピング学会 東京

2)松本健二、菊地千一郎、山内芳樹、三分一史和、石黒真木夫、久保田文雄、渡辺英寿、加藤敏:あとだしじゃんけん課題遂行時の難易度変化に伴う背外側前頭前野脳血液量の推移:平成22年9月4日 自治医科大学シンポジウムポスターセッション 栃木

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

三分一 史和

統計数理研究所