平成132001)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

13−共研−2052

専門分類

8

研究課題名

前方後円墳からみる畿内中央政権と関東地方豪族との政治的関係

フリガナ

代表者氏名

ウエキ タケシ

植木 武

ローマ字

Ueki Takeshi

所属機関

共立女子短期大学

所属部局

生活科学科

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

前方後円墳からみる畿内中央政権と関東地方
豪族との政治的関係
植木武・大塚初重・梅沢重昭・岸野洋久・村上征勝
 6年にわたり、大型前方後円墳のマウンド形態の類似をもとに、当時の政治的
連繋を推測する研究を進めてきたが、今回が最後となった。北関東から始めた当
初のデータベース作りは、ファーストハンドのデータをもとに作成したが、全国
に広げることから統一をもたせるため、最終的には『前方後円墳集成』のデータ
を全面的に採用することにした。小沢一雅(1988)の理論を採用し、前方後円墳
の7カ所(主軸長、後円部幅、くびれ部幅、前方部幅、後円部高、くびれ部高、
前方部高)の計測値をもとに、後円部幅と後円部高でそれぞれを割った5つの比
率値を出した。この5つの比率値をもとに、クラスター分析と数量化?類を試み
た。クラスター分析から、類似古墳のグループを捜し、数量化?類から、経時的
マウンド形態の変化を調べた。
 前方後円墳は、その地の支配者である豪族クラスのためにしか築造されなかっ
た、特殊な埋葬施設である。畿内から発生し、全国へ普及したのだが、考古研究
の進展から、その普及のスピードが数十年という驚くべき早さで関東まで進出し
たことが判明している。また、築造技術を考えると、単に土を盛り上げたもので
はなく、レイアウトに始まり、築壇技術、石室を作るための大石移動技術、石棺
作製技術等を含め、墳丘も左右対称に築造する大型土木技術も含まれている。天
皇や豪族クラスの埋蔵施設ということで、この築造の責任者は、それなりの地位
をもつ有力な技術工人で、要請により全国へ出張して築造指導に当たったと考え
る。当該研究は、同一人物か同一系列の人物かは問わずとも、同じレイアウトを
もとに古墳を製作すれば、規模はとにかくも形は類似するはずである、というこ
とを前提に成り立っている。規模に関しては、自分の父を尊敬するあまり、父の
墓より意図的に小規模なものを作った息子があったかも知れないということで、
生の計測値ではなく、比率値を分析に使用した。
 『集成』をもとに、長軸70メートル以上で、7カ所の計測値が容易に推定で
きる保存の良好な前方後円墳のみを抽出すると、計247例が見つかった。それを、
前期(?〜?期、250〜399年)、中期(?〜?期、400〜499年)、後期(?〜?
期、500〜600年)に分類すると、前期58例、中期132例(そのうち7例は前期
と重複する)、後期64例となり、それぞれを時期別に分析し、最後に、全期247
例(?〜?期)を一括して分析した。昨年の発表(??)と今年の発表(??)
が、247例の一括分析である。昨年は、クラスター分析から出た結果を名前のみ
でリストアップしたが、今年は、更にわかり易いように、畿内と関東の古墳が入
るものに限り、県別に類似グループを図化してみた(図1〜21)。地理的要素を
考えて、県は左側を西日本、右側を東日本にして並べ、更に同じ県内でも、やは
り西部に位置する古墳は左に、東部に位置する古墳は右にと配置して、理解しや
すく考慮したつもりである。
 ここで、ひとつ新しい分析概念の導入を説明したい。シリーズにわたり分析を
続けてきたが、その中間発表の段階で、ある質問が当該研究ではなかったが、当
該研究と同じく古墳の規格を扱う研究にあった。それは、長年月を経た古墳は、
マウンドの形態が崩れており、それをピンポイントで計測して分析するのは無理
がある、という批判であった。その考えに同調した私は、友人で天皇陵のみを調
査する宮内庁の職員に問い合わせたところ、調査前と調査後のズレは、約5%ぐ
らいであるということを聞いた。最も保存の良い天皇陵でさえ約5%の誤差があ
るなら、保存の悪い古墳などは10%を超える誤差を念頭に置かねばならないと
考え、そこで、当該研究の理論的フレームワークをまったく一新した。同時に、
クラスター分析にまったく新しい分析概念を考え出した。
 新理論的フレームワークとは、クラスター分析の結果を結論とせず、それを、
新たなる研究の仮説とすることである。この考えに変えることにより、マウンド
の崩壊から生じる誤差も、偶然の類似という誤謬も避けることができるようにな
る。前方後円墳研究は、マウンド形態はそのわずかひとつの方法であり、他にも
土器を含む埋葬遺物分析、石室を中心とする埋葬施設研究があり、それらを通し
て初めて結論が出るべきと考えたい。
 新らしい分析概念というのは、クラスター分析の結果を読みとる際、従来は漠
然と常識をもとに類似グループをその枝分かれをもとに選別するのだが、わわわ
れはしっかりとした線引きをして、それより左側で枝分かれするものを最近似ク

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

植木武・大塚初重・梅沢重昭・岸野洋久・村上征勝
2001「前方後円墳から考察する大和中央政権と東国地方政権との構造的関連(??)?全期古墳(?〜?)
考察 その2?」日本情報考古学会第12回大会要旨 pp.1-22。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大塚 初重

山梨県立考古博物館

村上 征勝

統計数理研究所