昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−20

専門分類

3

研究課題名

臨床検査データ解析における多変量自己回帰モデルの応用

フリガナ

代表者氏名

ワダ タカオ

和田 孝雄

ローマ字

所属機関

稲城市立病院

所属部局

職  名

病院長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

昨年の共同研究により,われわれは多変量自己回帰モデルを臨床データの時系列解析に用いるための基礎研究を行なって来た。その継続として,いろいろなタイプの臨床検査データに対しても適用し得る汎用性の高い解析法を完成させ,一般臨床家にもその利用を可能ならしめる事を目的として研究を行なう。


本年度は,統計数理研究所で開発した解析ソフトTIMSACに基づき,パワー寄与率および2種類のインパルス応答を用いて生体内の各種の系についてネットワーク解析を試みた。その結果,内分泌系,免疫系,代謝系のネットワーク解析において重要な解析結果がもたらされた。パワー寄与率は調節系の諸因子の貢献度を探る目的にきわめて有用である。また閉鎖系と開放系についてのインパルス応答を比較することによって,フィードバック系の構造を明らかにすることが可能である。ことに免疫系に関しては,従来から問題になっていた健康人および全身性エリテマトーデスにおけるリンパ球のネットワークの解析に大きな成果を得た。この疾患においてはヘルパーT細胞の過剰応答が見出され,これがサブプレッサーT細胞の機能異常につながる事が示された。この成績はIntl.J.of Computers and Mathmaticsに投稿受理され,まもなく出版の予定である。ついで内分泌系においては,健康人の甲状腺ホルモンの分泌調節について新しい知見を得た。すなわち従来からいわれているような甲状腺と下垂体の間におけるnegative feedbackは健康人では見出されず,むしろ甲状腺の機能異常があってはじめてこのループの役割が生じる。これらの結果から見て,今後この解析法を使用することにより,重要な医学,生物学上の知見がもたらされる可能性が高いと思われる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

昭和61年度の共同研究では,統数研の赤池らが開発したTIMSACを用いて,パワー寄与率およびインパルス応答が生体内の多変量フィードバック系の解析に有用であることを実証した。しかし原データの性格によっては必ずしもARモデルだけでは満足すべき結果が得られない場合もある。またインパルス応答については,フィードバックのある状態とそれを切断した場合のいずれにおける応答が生体の状態を再現させるのに適当であるかを判断せねばならない。このように,まだ多くの検討事項を残しているので,TIMSACのうちのいくつかのプログラムを組み合わせて解析法の完成につとめる予定である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

赤池 弘次

統計数理研究所

荒畑 恵美子

統計数理研究所

池内 達郎

スペシャルレファレンスラボラトリー

鈴木 洋通

慶應義塾大学

津崎 晃一

慶應義塾大学

平尾 明洋

東京螺子製作所

松尾 宣武

慶應義塾大学