昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−42

専門分類

5

研究課題名

ランダム・スピン系の相転移

フリガナ

代表者氏名

オノ イクオ

小野  郎

ローマ字

所属機関

日本女子大学

所属部局

理学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ランダムな相互作用で結合しているスピン系の相転移はスピン・グラスに代表されているように,未だ解決されていない。静的な秩序相があるのか,準安定な相か又は動的な性質か格子の次元やイジングかハイゼンベルグ・スピンかによって異ると予想される。主としてモンテカルロ法によるシミュレーションにより統計的な性質を解明するのが目的である。


相互作用〓がランダムなスピン系の相転移を,主としてモンテカルロ・シミュレーションを用いて調べることが目的である。
正方格子又は立方格子上に配置したスピンが上下2方向のみが許されるイジング系で,最近接ボンドが特に
(A)強磁性的(〓>0)で強さがランダムな分布
(B)強磁性と反磁性ボンドが混合し,フラストレーションを含む分布(±J模型)
について相転移に対する影響を調べた。
(A)ランダム強磁性の場合
基底状態のスピン配列はすべて平行であり,強磁性想になる。相転移温度は相互作用の分布平均値が一定であれば分布の幅によらずほぼ一定で,さらに分布の幅が広くなると,わずかに低温側ヘシフトする。比熱のピークの幅,磁化率の温度変化とも分布の幅の影響はほとんどうけないことがわかった。
(B)フラストレーションを含む場合
相互作用のループ上の〓の積が負の時は基底スピン配列が競合し,縮退していることがわかる。これをフラストレーションという。ボンドの空間分布の選び方により,±Jの混合比を一定に保ったまゝでも(50−50)フラストレーション濃度(〓)自由に変えることができる。シミュレーションによりわかったことは
(1)基底エネルギーは〓に比例して上昇する。
(2)個々のフラストレーションが干渉しない配置では転移温度は〓に比例して低下し,〓=0.7までこの傾向はつづく。
(3)比熱や秩序変数も2次転移を示し,スピングラス的にはならない。
したがって,フラストレーション間の干渉によってはじめ転移の性質が変わるものと予想され,単にフラストレーション濃度だけでは決定できないことがわかった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1987.10 物理学会分科会
1988.3 物理学会総会
フラストレーションを制御したランダム系のシミュレーションIII−IVで発表済
1988.8 YKIS ’88 国際会議
“Coperative Dynamics in Complex Physical Systems”に発表予定


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

スピングラスの本質は相互作用の競合によるフラストレーションが重要であり,それに伴った基底スピン状態の縮退が相転移に強い影響を与えると思われる。フラストレーションの濃度および分布を制御してモンテ・カルロ法によるシミュレーションを実行して性質を調べる予定である。通常の混晶の実験では得ることのできないデータを得ることができる。統数研の計算機を利用すること,および田村助教授の卓抜した計算機の利用の能力は当研究の推進にはぜひ必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石川 一彦

東京工業大学

尾関 之康

東京工業大学

田口 善弘

中央大学

田村 義保

統計数理研究所