平成302018)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

30−共研−1030

分野分類

統計数理研究所内分野分類

c

主要研究分野分類

4

研究課題名

データ同化手法による核融合プラズマの統合輸送シミュレーション

フリガナ

代表者氏名

ムラカミ サダヨシ

村上 定義

ローマ字

Murakami Sadayoshi

所属機関

京都大学

所属部局

工学研究科

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 将来の核融合プラズマ制御において,プラズマの温度や密度を高精度で予測することが重要である.そこで本研究では,統合輸送シミュレーションコードTASK3Dに,プラズマ温度・密度の時系列観測データを用いたデータ同化の導入を行う.これにより,核融合プラズマの加熱時等における挙動を高精度に予測するとともに,プラズマ内に発生する乱流輸送の解析を行うことを目的とする.
 統合輸送コードTASK3Dは核融合プラズマ(トーラス形状)の小半径方向1次元の熱輸送方程式を解くコードであり,これによるLHD(*1)プラズマに対する熱輸送シミュレーションにデータ同化手法(アンサンブルカルマンフィルタ)を導入した.状態変数として温度,密度,乱流モデル定数,加熱分布を取った.これらは,それぞれ電子と温度について存在し,径方向60グリッドの空間分布を持っているため,全部で480次元の状態ベクトルとなった.これに温度と密度の時系列データ(240次元)を同化した.乱流モデル定数とは,熱輸送方程式内で仮定している乱流モデル内の定数であり,本来時空間的に一定としている.また,加熱分布とはNBI加熱(*2)による加熱量をGNET-TDコードにより計算したものである.システムノイズの与え方として,径方向距離に対して指数関数的に減衰するように分散共分散行列を作り,グリッドに対して滑らかにノイズを加えた.各種ノイズ強度は,変数それぞれに対して一定としていたが,データ同化シミュレーション中に確率分布の発散や収縮が生じたため,コバリアンスマッチングを基にした動的調整を取り入れた.観測データを40msec周期で同化させ,アンサンブルメンバー数2000によるシミュレーションを行った.
 結果として,今回扱ったショット(114053)については,電子温度,イオン温度ともに高精度に観測データが再現された.また,電子乱流モデル定数について時空間的に大きな変化が見られた.今後は,多数蓄積している他のショットのデータに対してもこの方法で同化し解析することで最適な乱流モデルを推定すると共に,その物理的解釈を行う.また,実時間よりも早く計算し,高精度な予測を行うために,計算モデルの簡約化と最適化を行う予定である.

(*1)LHD : 大型ヘリカル装置、核融合科学研究所にある世界最大級の超伝導核融合実験装置
(*2)NBI加熱 : 中性粒子ビーム加熱,プラズマの加熱方法の一つで,外部からプラズマに中性粒子ビームを打ち込むことで,プラズマ内に高速イオンを発生させる.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会等発表

1.森下侑哉,他,「データ同化手法によるLHDプラズマ解析」,プラズマシミュレータシンポジウム2018,核融合科学研究所,2018年9月13日-14日

2.森下侑哉,他,"Integrated transport simulation of LHD plasma using data assimilation", 第 16 回 核燃焼プラズマ統合コード研究会, 九州大学筑紫キャンパス, 2018年11月29日-30日

3.森下侑哉,他,「データ同化手法による LHD プラズマの統合輸送シミュレーション」,第35回 プラズマ・核融合学会 年会,大阪大学コンベンションセンター(吹田市),2018年12月3日-6日

4.森下侑哉,他,「データ同化手法を用いたLHDプラズマの統合輸送シミュレーション」,閉じ込め・輸送研究会2018,核融合科学研究所,2018年12月12日-14日

5.森下侑哉,他,「データ同化手法を用いたLHDプラズマの統合輸送シミュレーション」,第22回若手科学者によるプラズマ研究会 ,量子科学技術研究開発機構 那珂核融合研究所 ,2019年3月18日-20日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

森下 侑哉

京都大学

横山 雅之

自然科学研究機構 核融合科学研究所