昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−85

専門分類

8

研究課題名

“自然体験”による子供の心の教育効果に関する統計的研究

フリガナ

代表者氏名

センノ サダコ

千野 貞子

ローマ字

所属機関

いわき明星大学

所属部局

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

人口の都市集中化,自然破壊,学歴偏重の風潮など,日本の子供たちにとって,現在の社会環境は必ずしも健全であるとは言い難い。家庭内暴力,校内暴力や弱い者いじめなどの現象は,一つにはこのような社会構造・生活環境が起因していると思われる。これを検証する目的で,国立・那須甲子少年自然の家の利用者に対し日常生活の実態を知る為のアンケート調査を行う。特に自然の中での集団生活の体験から得られる教育効果について統計的測定を継続的に行うことを目的としている。


実施状況:1987年1月11日関東地区及び福島県の小学校(26校)中学校(25校)宛郵送調査(サンプル数2000名)を実施。回収サンプル1908に対し集計分析,統計的解析(AIC,多次元尺度解析など)を行った。また1986年8月4日中華民国台湾省台北市に於て開催された1986 International Statistical Symposiumに,本共同研究関連テーマComparison of Attitudes toward Nature among Nationsと題して講演したところ太一広告股〓有限公司の協力を得,台北市,台中市の小中学生370に対し,1984年日本調査と同じ質問について同様の調査を行うことができた。このデータに基づいて本年度は研究課題を日台比較という国際的な場でデータ解析することが可能となり,これに主力を注いだ。
成果:両国の間に大きな差が見られた(AIC値により判定した)質問をみると,国防上あるいは気候,風土の差から必然的に回答差の出たものもあるが,家族で海山に行っている比率及び“草花を摘む”とか“日の出,日の入りを見る”といった卑近な意味での自然とのかかわりについて日本より台湾の方が経験豊かであり,高い有意差を示している。さらに,日常生活すなわち,掃除,洗濯,赤ん坊の世話など生活に密着した手伝いについても台湾の子供の方が日本の子供よりよくやっているという結果が得られた。また家庭環境面では,台湾も核家族化が進み,共働きが多く(台中市,約70%)なってきているが,“困ったときの相談相手”として,日本では先生や父親を選ぶケースが極端に少ないのに対し,台湾の方が有意に多い。しかも台湾では,父親の躾が母親よりも巌しい。これらの結果から我々が得たものは,日本の子供達にとっての父親不在,さらに子供自身の家庭からの遊離,それらが自然離れと相まって,台湾との比較においてもさらに強調されたということである。
前年度の研究結果を台湾との比較という形で検証できたことの意義は大きな成果であったといえよう。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

少年の日常生活における自然とのかかわり(II)−関東地区在住の子供の生活実態を通して−
統計数理研究所 数研研究リポート第66号 1988.3
日本林学会 九州大学 1987.4.3
少年の日常生活における自然とのかかわり−森林観に関する国際比較の視点からの分析−
森林文化研究第8巻第1号 森林文化協会 1987.9
Perception toward forest among nations−Date Analysis and Informatics Fifth International Sympoisum
Versailles(France)1987.10.2
Comparison of boy’s experience in their daily lives between Japan and Taiwan
統計数理研究所RESEARCH MEMORANDUM NO.342 1988.1
少年の日常生活における自然とのかかわり−第一版−


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

前年度に引き続き,「少年自然の家」を取り巻く環境を通して,子供の心の変化を統計的に分析する。さらに,調査者が教師,児童と生活を共にし,彼等の心の問題点を探っていく。具体的には,関東地区及び福島県の小・中学校51校(層別サンプリング)約2000人に対するアンケート継続調査(今回は児童の心理面を探求する質問をあらたに加えている)を実施し,結果の統計的分析を行う。また,那須甲子少年自然の家に於けるグループ面接調査も実施する。なお,この研究は,国立台湾大学などとの提携により,台北,台中における小,中学生の生活調査を通して,日台比較に発展する為の重要性を含むものである。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

坂本 忠雄

国立那須甲子少年自然の家

澤田 利夫

国立教育研究所

白相 岳男

宇都宮大学

鈴木 義一郎

統計数理研究所

南条 善治

東北学院大学