平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2043

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

過疎地域に居住する高齢者の地域生活の課題  ― 社会生活基本調査結果の分析からの検討

フリガナ

代表者氏名

スギイ タツコ

杉井 たつ子

ローマ字

Sugii Tatsuko

所属機関

常葉大学

所属部局

健康科学部看護学科

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

14千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

1.研究目的と方法
 過疎地域と非過疎地域の高齢者の日常生活状況の比較をとおして、過疎地域で生活する高齢者の居住を困難にしている要因を分析し、地域生活支援の課題を明確にすることを目的として、社会生活基本調査のデータを利用して分析した。
 研究方法は、国が実施した平成23年社会生活基本調査のデータを入手し、過疎地域と過疎地域以外に居住する高齢者の比較を行った。なお、過疎地域は、過疎地域自立促進特別措置法で指定された市町村を抽出した。
 本研究では、2種類の調査票を利用した。(各調査票の内容については、総務省統計局ホームページhttp://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/h23kekka.htmを参照)
調査票A:標本数96,141(内訳:過疎地域に居住する高齢者は13,814,過疎地域以外に居住する高齢者は82,327)分析した内容は、生活行動・生活時間・時間帯
調査票B:標本数5,551(内訳:過疎地域に居住する高齢者は433,過疎地域以外に居住する高齢者は5,118)分析した内容は、生活行動・生活時間・時間帯 (調査票Bは、時間について詳細に記述していることが特徴)
 
2.研究経過の概要
 詳細な分析は今後の課題であるが、集計結果から現段階で得られた研究成果を報告する。

1)高齢者の生活状況の特徴
 調査票Aの回答から、過疎地域に居住する高齢者と過疎地域以外に居住する高齢者の生活状況を比較した。なお、回答者の世帯類型は、過疎地域では、単身世帯が15.0%,高齢者夫婦世帯が32.8%であった。過疎地域以外では単身世帯が15.3%,高齢者夫婦世帯が37.2%であった。
過疎地域の高齢者の生活状況には、次の特徴が見られた。
・住居は、持ち家が過疎地域で94.8%、過疎地域以外で89.6%と高かった。
・所得では、年収200万円未満が過疎地域で29.4%、過疎地域以外で20.8%と低所得者が多かった。
・自家用車の所有は、過疎地域で77.8%、過疎地域以外で73.8%とやや高い傾向にあった。   
・子どもの住所は、同居率が過疎地域で46.7%、過疎地域以外で43.4%とやや高い傾向にあった。反面、近隣や同一市町村に居住する割合が低く、他地域に居住している者が過疎地域で28.6%、過疎地域以外で22.2%と離れて生活していた。
 調査票Bでは、単身世帯の比率が過疎地域の方が多かったが、同様の傾向が得られた

2)1日の生活時間の特徴
 調査票Aの回答結果から、過疎地域に居住する高齢者と過疎地域以外に居住する高齢者の食事、買い物、家事、介護・看護に要する時間等を比較した。過疎地域の高齢者の生活時間には、次の特徴が見られた。
・仕事の時間が多く、前期高齢者・後期高齢者共に約1.5倍であった。
・睡眠時間及び休養・くつろぎの時間では、前期高齢者・後期高齢者共に多い傾向があった。
・テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等を視聴する時間は、男女共に少ない。
 調査票Bの回答結果からも同様の傾向が得られた。仕事に要した時間では、70歳以上の高齢者の有償労働に従事した時間が多く、70-74歳では2.2倍であった。

3)介護・看護に関する特徴
 調査票Aの回答結果では、介護を受けている人の割合は過疎地域と過疎地域以外共に9.5%で差が見られなかった。また、介護サービスの利用状況では、後期高齢者で週2日以上の介護サービスを利用している者が利用者全体で占める割合は、過疎地域で74.1%、過疎地域以外で73.3%と大きな差は見られなかった。
 
4)移動に関する特徴
 調査票Aの回答結果では、移動に要した総平均時間を比較すると、過疎地域以外に居住する高齢者の方が前期高齢者・後期高齢者共に約1.3倍多かった。反面、買い物及び受診・療養に要した時間を見ると、過疎地域以外に居住する高齢者の方が多く、受診等の行動頻度が少ないことが関係している。
 また、買い物サービスの利用における比較では、70歳未満では過疎地域の高齢者が多かったものの、70歳以上では過疎地域以外の方が多く、過疎地域の高齢者が自給自足的な生活をしている傾向がある。
 調査票Bの回答結果では、調査期間中に移動した高齢者(過疎地域41名 行動率9.5%,過疎地域以外1,630名 行動率31.8%)の行動平均時間を比較した。移動に要した時間は、過疎地域で68.9分、過疎地域以外で76.3分であり、過疎地域以外の高齢者の方が移動に要した時間が多かった。

5)受診に関する特徴
 調査票Bの回答結果では、調査期間中に受診した高齢者410名(過疎地域34名 行動率7.9%,過疎地域以外376名 行動率7.3%)の行動平均時間を比較した。受診に要した行動平均時間は、過疎地域で109.0分、非過疎地域で92.1分と、過疎地域の方が多かった。
    
6)社会的活動・コミュニケーションについて
 調査票Bの回答結果では、交際に要した平均時間が過疎地域で33.9分、過疎地域以外で28.7分と過疎地域の方が多い。反面、家族とのコミュニケーションによる付き合いに要した時間は、過疎地域で8.8分、過疎地域以外で9.4分と少なく、多くは相手が家族以外であった。
 社会参加活動の総平均時間では、過疎地域1.5分、過疎地域以外0.8分と過疎地域以外よりもやや上回った。
 
3.今後の課題
 今後、過疎地域の高齢者の生活状況の特徴について、生活時間の分析をとおして明らかにする。特に過疎地域の高齢者の「在宅介護」と「交際・つきあい」及び「移動」について、年齢・世帯・収入との関係を分析する。 

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文投稿に向けて準備中であり、平成26年9月までに投稿する予定である。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

特記事項なし(当初から計画はしていない)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

土屋 隆裕

統計数理研究所