平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2042

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

公的統計を用いた高齢女性の就業分析

フリガナ

代表者氏名

テラムラ エリコ

寺村 絵里子

ローマ字

Teramura Eriko

所属機関

国際短期大学

所属部局

国際コミュニケーション学科

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本申請課題は、職業キャリアの最終地点として、高齢女性の置かれている就業の現状を意識面と収入面に着目して把握することを目的とする。
 本課題では、特に単身世帯と一般世帯との比較検討を行い、就業履歴に関するジェンダーを考慮に入れつつ、高齢女性の働き方を考える。世帯類型に着目する理由は2 点挙げられる。第一に、高齢女性の就業について考える時に、夫婦の世帯だけではなく単身世帯の増加が指摘されているためである。第二に、高齢者の就業選択に大きな影響を与える年金保険制度が、第3 号被保険者制度等による世帯類型による給付制度を明示的に取っていることから、世帯類型が女性の就業選択に影響を与えていると考えられるためである。
 使用するデータは公的統計(内閣府)のミクロデータの貸与を受け、二次分析を行った。得られた分析結果は次の通りである。
1)2000年代における高年齢者女性の就業上の変化は、わずかながらも就業率の上昇にあらわれている。とはいえ、働いている高年齢女性は2割程度にとどまっており、すでに引退した者の就業意欲も2割程度と高いとはいえない。このような中、特に60歳代の比較的若い高年齢女性が労働市場に出ており、世帯類型別にみると女性単身世帯でこの傾向がより強い。労働市場参加にともない、この年代では収入に占める年金・恩給に依存する割合も低下傾向にある。今働いていない者で、比較的就業意欲があるのは定年によりリタイアしたと予想される被雇用者であった者である。また、過去の就業履歴は雇用者として働き続けてきた者も多いが、就業形態は非典型雇用比率が男性に比べ高い。
2)高年齢女性の世帯類型別にみた収入は、高年齢単身女性世帯について年収200万円以下が9割を超え圧倒的に他の世帯類型よりも低い。収入水準は、同年代で継続勤続年数が同じであっても、男性に比べ低い。正規雇用として勤続年数を重ねてきた比較的職歴の安定した高年齢者でも、男女で収入水準は大きく異なっている。高年齢女性の生活のゆとりに与える要因としては、月々の収入に加え、貯蓄額によるところが大きくあらわれている。また世帯類型別にみると、配偶者と離死別した場合には生活のゆとりを感じる確率が高まるが、一人暮らしの場合は負の効果が大きくあらわれる。また、2002年と2007年の2時点を比較すると、2007年にかけて収入水準が低下するとともに、生活のゆとりを感じる確率が低くなっている。
3)過去の就業履歴の有無が、高年齢となった時の就業選択の大きな要因となっている。専業主婦として過ごしてきた者の現在の就業確率は低い。さらに、先行研究同様に年齢及び健康状態は高年齢女性の就業抑制の大きな要因となっている。
 2000年代の大きな変化として、配偶者を看取ったり、離別したりして単身となった高年齢女性が徐々に仕事を持つようになっている。配偶者のケアに関してはジェンダーによる非対称があるようである。人によっては育児や親の介護を終えた後、さらに配偶者のケア役割から解放された配偶者と離死別した高年齢女性が、ようやく自分の時間を持てるようになる様子がデータからかいま見える。また、過去の就業履歴が仕事を続けてきた場合に現在の有業率が高いことから、高年齢者として労働市場に出る場合にはこれまでの就業履歴も大切であるといえる。  
なお、研究の最終的な目標は厚生労働省『国民生活基礎調査』を用いた二次分析である。同データには、今回用いた内閣府の調査データにはない高齢者の健康状態や収入・年金に関する詳細なデータが含まれており、就業行動を分析する上でより精緻な分析が可能となるためである。本件については2013年度に行った研究成果をふまえ2014年度に取組み、レポート発行を行いたい。
 当初、2013年度中にレポート作成・発行を目指していたが発行まで至らず、進捗の遅れをお詫び申し上げたい。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

 使用データは東京大学社会科学研究所SSJデータアーカイブを通じて貸与を受けた内閣府(2002)『高齢者の経済生活に関する意識調査』及び内閣府(2007)『高齢者の経済生活に関する意識調査の個票データである。
 ミクロデータのため、個人属性別にみた詳しい就業行動の検証が可能となっている。学会発表は本助成を受ける前の2012年度に2回行っており、その際にいただいたご指摘をもとに2013年に論文を大幅に修正した。研究成果は以下の通りであり、2014年9月に共著の一章として発刊予定である。

【書籍等出版物】
寺村絵里子(2014)「高年齢女性の就業行動」『人口高齢化と人口政策』第7章、原書房

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

公的統計及びパネルデータの取り扱いに関し、2回研究会を実施した。

日時:2014年1月26日、2月2日 13:00-17:00
場所:お茶の水女子大学本館経済資料室
参加人数:4名及び講師1名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

椿 広計

統計数理研究所

永瀬 伸子

お茶の水女子大学