平成262014)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

26−共研−2022

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

3

研究課題名

新生児の自発運動の解析

フリガナ

代表者氏名

ナカノ ジュンジ

中野 純司

ローマ字

Nakano Junji

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

51千円

研究参加者数

8 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 生まれて間もない時期の乳児の動きに、脳神経系の発達過程が反映されているという考え方は、小児神経学の研究から報告されている。Prechtlら(1993)は、乳児の特徴的な全身の動きをgeneral movements(以下GMs)と名づけ、GMsの症例研究を重ねるなかで、GMsには正常なパターンと異常なパターンがあることを示した。そして継続的に異常なGMsを認める場合には、神経学的後遺症が示唆されることを示した。このような診断法は、非侵襲的で、乳児に負担をかけることがなく、何度も繰り返し行えるという利点がある。しかし、この診断法における乳児のGMs評価は定性的であり、臨床場面で実用的な段階にあるとは言いがたい。発達障害のリスクの高い早産児をあつかう臨床現場では、脳神経系の発達状態を示すといわれるGMsの客観的・定量的な評価方法の確立とともに、その背後にある運動発達のメカニズムを明らかにすることが強く求められている。
 そこで本研究では定性的に定義されるハイリスク乳児のGMsの特徴を、統計的・数理的手法などを用いて定量的に捉えることを目標とする。GMsは、出産予定日後6〜8週時点で、その特徴を変化させるといわれている。そこで極低出生体重児における予定日前後のwrithing general movements(以下writhing GMs)、および修正2ヵ月時点のfidgety general movements(以下fidgety GMs)、それぞれでのGMs評価の発達予後予測などについて調べている。
 我々はこれまでに、極低出生体重児におけるwrithing GMs、およびfidgety GMsをビデオに撮りため、さらに予定日前後におけるGMs診断で異常性が認められた対象児の3歳と6歳時点のフォローアップデータを蓄積してきた。その結果、3歳時点での診断において、脳性麻痺や広汎性発達障害などの発達障害児が含まれることが明らかになった。また6歳時健診のデータと注意欠陥多動性障害や広汎性発達障害については診断は6歳以降でなければ確定せず、疑いとして扱われた。さらに2回のGMsの撮影が可能であったデータ
数はまだそれほど多くはないものの、fidgety GMsがより発達予後予測診断には重要である可能性を指摘してきた。また、ビデオデータを元にしたいくつかの統計的な指標を提案し、その解析を行った。今回は、提案した指標のうちのいくつかが脳性麻痺と関係を持っていることを示した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Kanemaru, N., Watanabe, H., Kihara, H., Nakano, H., Nakamura, T., Nakano, J., Taga, G. and Konishi, Y. (2014) Jerky spontaneous movements at term age in preterm infants who later developed cerebral palsy, Early Human Development, 90, 387-392, doi:10.1016/j.earlhumdev.2014.05.004.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究打ち合わせ・2014年6月7日・統計数理研八重洲サテライトオフィス・7名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大村 吉幸

東京大学

木原 秀樹

地方独立行政法人長野県立病院機構 長野県立こども病院

小西 行郎

同志社大学

多賀 厳太郎

東京大学

高谷 理恵子

福島大学

中野 尚子

杏林大学

渡辺 はま

東京大学