平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2031

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

持続的森林経営に向けた経済指標としての価格閾値の探求

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto, Atsushi

所属機関

東北大学

所属部局

大学院環境科学研究科環境科学専攻

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

250千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

1.研究目的
 国民の地球環境問題への関心が高まるにつれ,森林の有する国土保全機能,水源かん養機能,CO2吸収機能などの公益的機能への評価が見直され,生産財としての機能に加えて環境財(公共財)としての機能を踏まえた多目的機能が認識されている.1993年9月には,モントリオールにおいて「温帯・北方林の持続可能な開発に関する専門家会合」が開催され,日本をはじめカナダ,アメリカなどの合意のもと,温帯・北方林の保全と持続可能な管理の判断基準および指標について提案がなされた.その後,生物多様性,森林生態系の生産力,健全性などに関わるモントリオールプロセス指標が計67導入された.しかしながら,現状の森林を取り巻く経済環境の悪化,特に木材価格の低迷に伴い,中山間地域における再造林の放棄・間伐などといった管理そのものの放棄が発生してきており,経済的な持続性が問題視されている.
 本研究は,モントリオールプロセスにより導入された生物学的な指標とは異なり,持続的な森林資源管理に向けた経済指標としての木材価格に対する閾値の探求を行った.仮に管理を持続できる価格閾値が探求されれば,市場価格が閾値を下回れば,その格差を政策的な援助によりまかない管理の持続が可能になる.すなわち,価格リスクによる管理放棄をあらかじめ予見し,持続的な森林資源管理が遂行できる.
2.研究成果
 1975年4月〜2006年3月までの全国平均のスギ中丸太月次データを使用し,幾何平均回帰プロセスを用いて,価格動向を捉え,「伐採待機」,「伐採&植林」,「伐採&放棄」の3つの意思決定樹形図に基づき,確率動的計画法を用いて森林管理モデルを構築した.まず,オイラー法による近似を用いて,疑似最尤法にて幾何平均回帰プロセスの係数を推定した.推定では,平均回帰を仮定するために,係数を指数変換し,係数符号を固定した.分析の対象には,スギ林に対する密度管理図の成長モデルを用いた.使用した価格データによる推定では,平均回帰値はゼロとなった.これは価格動向の短期的な直近の減少傾向が強く影響したことによるものと考えられた.そこで,外的に長期的な費用などを考慮し平均回帰を5000,8000,10000,12000,と15000円/m3と仮定し,再度推定を行い,価格閾値の探求を行った.その結果,まず平均回帰値が増加するに伴い,価格のボラティリティが増加することが分かった.また,全体の分析結果を通して,現在の価格が価格閾値に近づくにつれ,最小伐期齢が増加することが分かった.すなわち,最小伐期齢が増加する現象が観察されれば,現在の価格が価格閾値に近づきつつあり,「伐採&放棄」の可能性が増すことが分かる.伐採費用も価格閾値に影響を与え,費用の増加に伴い,価格閾値も増加する.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表:
Yoshimoto, A. Searching for a minimum threshold price toward sustainable forest stand management with different types of price data sets, Annual Conference on Canadian Operational Research Society, Ontario, Canada, 2007

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

二宮 嘉行

九州大学

柳原 宏和

広島大学