平成302018)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

30−共研−1005

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

7

研究課題名

金融証券市場の高頻度データとマーケット・マイクロストラクチャー

フリガナ

代表者氏名

ヨシダ ヤスシ

吉田 靖

ローマ字

Yoshida Yasushi

所属機関

東京経済大学

所属部局

経営学部

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

金融・証券市場は、単に流動性を提供する場としてだけではなく、価格の発見機能を通じて、効率的な資源配分に寄与して経済の厚生を向上させ、また、金融センターの中心となる社会的インフラでもあり、国全体の競争力向上にとっても重要な存在である。これらの市場を構成する取引所に対する近年の投資家のニーズは、取引システムの安定性、高速性、取引時間の延長から、決済制度、法的な規制の改善まで多岐に亘っている。このような背景で各取引所では、取引システムの機能改善、取引時間の延長などの対策を実施している。一方で、処理速度の高速化がフラッシュクラッシュの発生の一因とする意見もあり、その影響を分析することが重要になっている。本研究では東京商品取引所において2016年9月20日に導入された新システムによる高速化が、流動性に与えた影響、特にマーケットインパクトに与えた影響を、約定および気配の更新の高頻度データにより計測し、旧システムと比較することを目的としている。
 分析にあたっては、東京商品取引所の主要商品である金先物の期先のデータを用いる。対象期間は旧システムについては2017年4月限が期先となっていた2016年4月26日から6月27日、新システムについては、2018年10月限が期先となっていた2017年10月27日から10月29日である。
 分析の結果、出来高や売り気配と買い気配のスプレッドなどの流動性指標には大きな相違はないものの、マーケットインパクトとして、5分間隔のデータにより成行注文が価格変動に与える影響を計測すると、新システムは有意に小さくなっていることが確認できた。
すなわち、新システム導入により、早朝時間の延長でスプレッドはほんの僅かに拡大した可能性があるが、一方で特に昼間の日本主導の時間帯でマーケットインパクトは縮小幅が大であり、このように時間帯別に計測することが重要あることがわかった。
 今回の結果は、東京商品取引所のシステム更新により、マーケットインパクトが低下したことを示唆しているが、その詳細は今後の課題である。電子取引の拡大は著しいが、その主たる取引手法である指値注文市場のマーケットマイクロストラクチャーには研究上の課題も多い。本研究により、売買スプレッドなどのよく用いられている流動性指標に加えて、マーケットインパクトを計測することの重要性および取引時間帯による変動を分析することの重要性も確認することができた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

JAROS 2018 研究発表大会
(Japan Association of Real Options and Strategy、日本リアルオプション学会)
日時 2018年 12月 1日(土)
場所 東京経済大学(国分寺キャンパス 2号館) 東京都国分寺市南町1-7-34

コモディティ・ファイナンス研究部会セッション 座長:辻村 元男(同志社大学)
「東京商品取引所の高頻度データによるマーケットインパクトの分析」
吉田 靖(東京経済大学)

URL: http://www.realopn.jp/S5_menu.html

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

単独での研究会は開催していない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川崎 能典

統計数理研究所