平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−107

専門分類

8

研究課題名

古墳時代における関東地方豪族の政治的割拠の解明

フリガナ

代表者氏名

ウエキ タケシ

植木 武

ローマ字

所属機関

共立女子短期大学

所属部局

生活科学科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

関東における古墳の発生は、畿内に遅れること約1世紀の4世紀後半からである。当時の地方豪族の拠点は、現存する前方後円墳の分布である程度判明する。しかし、多数の前方後円墳をどのようにグループ化して、ひとつの有力豪族の政治的テリトリーと判断するかは、難しい問題である。形態の類似性をもとにグループ化を試み、古墳時代の関東豪族の勢力範囲を明らかにする。もし、これが可能となれば、古文献で判明している7世紀頃の地方豪族分布と検証することができる。


古墳時代(西暦4,5,6世紀)に築造された前方後円墳の中でも、主軸長70m以上の大型古墳を対象に、そのマウンド(墳丘)の各部比率の比較を通して類似関係をみた。遺物等の出土をもって各前方後円墳は築造時期が推定されているが、マウンドの形式変化が、築造時期とある種の斉一性を持っているかどうか検討してみた。
つまり、同一工人、あるいは、同一技法で作成された古墳は、その出来上がったマウンドが類似するはずであるという前提条件を考えた上でのことである。そして、この類似関係が地図上でクラスター化してくれれば、同一技法で作られたということで、何らかの政治的関連があったと推測できる。
条件に見合う例が79サンプル抽出され、これらの古墳から計測値を得る。意図的に規模を小さくした例が考えられるので、計測値そのままを使用せず、5個の比率値を作り、これらをもとにクラスター分析と数量化III類分析を行った。また、地図上に古墳を落とし、類似する古墳を比較してみた。
クラスター分析から判明したことは、3つのサブクラスターが存在し、その中でひとつを除き、ふたつは築造時期に少数例を除き斉一性がみられたこと、また、系時的に形態変化が認識できたことである。数量化III類分析からは、南関東と北関東の形態の傾向や、時期別(4,5,6世紀)に形態の傾向が判明した。
最後に、古墳の立地と律令古代道・国府(8世紀)との関連を地図上で検討してみた。予測されたように、古墳の多くは、律令古代道に添ってあり、国府は古墳の集合地近辺に建立されたことが判明した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

植木 武、大塚初重、梅沢重昭、岸野洋久、村上征勝
1997「経時的にみた関東地方前方後円墳の形態変化」重点領域研究、人文科学とコンピュータ、人文学と情報処理No.13,pp.57ー68、BSデータ、東京:勉誠社。
1997「前方後円墳から見た関東地方の豪族の勢力分布」シンポジウム、人文科学における数量的分析(2)、pp.61-76、文部省科学研究補助金、重点領域研究「人文科学とコンピュータ」数量的分析計画研究班。

植木 武、大塚初重、梅沢重昭、岸野洋久、村上征勝
1996「前方後円墳から考察する大和中央政権と東国地方政権との構造的関連(III)─関東地方を俯瞰して」日本情報考古学会第2回大会発表要旨pp.5-16.
1997「前方後円墳から考察する大和中央政権と東国地方政権との構造的関連(IV)─大型前方後円墳をもとに」日本情報考古学会第3回大会発表要旨pp.8-27.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

大型前方後円墳の築造には、それなりの工人が特殊のノウハウをもって数百人という労働力を使って数カ月から1年以上を費やして初めて可能となる。ここに、同工人が、あるいはそのノウハウを受け継いだ工人により構築された前方後円墳は、仕上がった形態に類似性がみられるはずであるという仮定のもとに分析を進める。関東の大型前方後円墳の各部の計測値をもとにデータベースを作成し、これから統計解析(クラスター分析、主成分分析、数量化?類他)を通して似ているもの同士をグループ化する。そこで、貴研究所研究者の適切なアドバイスと、設備機器の使用許可を願いたいわけである。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

村上 征勝

統計数理研究所