平成272015)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

27−共研−4303

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

前立腺がんの記述疫学研究:過剰診断・治療効果の影響

重点テーマ

次世代への健康科学

フリガナ

代表者氏名

イトウ ユリ

伊藤 ゆり

ローマ字

Ito Yuri

所属機関

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター

所属部局

がん予防情報センター

職  名

主任研究員

配分経費

研究費

40千円

旅 費

275千円

研究参加者数

8 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

●研究目的
前立腺がんの罹患率(発症率)・死亡率・生存率の動向を分析することにより、PSA検査や内分泌療法の普及の影響を検討する。

●研究成果
平成27年度は、先行研究で行われた内容について、各種データを更新し分析を行った。大阪府がん登録資料および人口動態統計を用いて、年齢調整罹患率(1975-2009年)及び死亡率(1975-2013年)のトレンドを検討した。Joinpoint regression modelを適用し、罹患率や死亡率が変化する年(joinpoint)を推定し、その区間の年平均変化率(Annual Percent Change: APC)を得た。年齢調整罹患率は急増傾向(APC=10.5%)にある一方、年齢調整死亡率は横ばい〜わずかな減少傾向がみられた(APC=-1.3%)。
 診断時進行度別罹患率のトレンドは、限局患者(がんが原発部位のみにとどまっている状態)の罹患率が年11.5%、領域患者(がんがリンパ節や隣接する臓器に拡がっている状態)における罹患率が16.6%と急増している一方で、遠隔転移の患者は1996年以降、年1.7%の減少にとどまっていた。
 5年・10年相対生存率は、全患者においてはPSA検査が普及し始めた1990年代以降、5年生存率・10年生存率ともに大きく向上していた。診断時期による生存率の向上に対して進行度分布の変化がどの程度寄与しているかをみるために、相対生存率の多変量解析モデル(Excess hazard model)を適用した。1990年代以前では年齢や進行度を調整したどのモデルにおいても診断時期による過剰死亡リスク比(Excess Hazard Ratio: EHR)が減少しているが、1995年以降、進行度のみ、進行度及び年齢を調整したモデルのEHRの減少はそれ以外のモデルのEHRの減少に比べ小さく、乖離が生じた。これは、全体における生存率の向上が主に進行度分布が早期へシフトしたことによると考えられる。
 今後は前立腺がん患者における他死因死亡の影響やがん進行度別罹患率・生存率・死亡率と検診受診率・治療内容との関連についてさらなる検討を行う。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表

1. Ito Y, Nakaya T, Kondo N, Fukui K, Nakaya K, Ioka A, Miyashiro I, Nakayama T, Rachet B. SOCIO-ECONOMIC DIFFERENCES IN STAGE-SPECIFIC CANCER INCIDENCE IN OSAKA, JAPAN: 1993-2004. 37th International Association of Cancer Registries, Annual Scientific Conference 2015. 8-10. Oct. [Oral Presentation] O179. Mumbai, India.

2. 伊藤ゆり, 福井敬祐, 森島敏隆, 中田佳世, 田淵貴大, 中山富雄, 宮代勲, 松浦成昭. 大阪府のがん生存率は30年間でどの程度向上したか?:1975-2008年診断例による分析. 第26回日本疫学会学術総会. 2016;P2-006 [Poster].


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

テーマ「次世代への健康科学」
平成27年12月4日 10:25〜17:40 統計数理研究所 参加者人数40人

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

小向 翔

久留米大学

杉本 知之

弘前大学

服部 聡

久留米大学

福井 敬祐

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター

船渡川 伊久子

統計数理研究所

逸見 昌之

統計数理研究所