昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−24

専門分類

3

研究課題名

そううつ病患者のサーカディアンリズムの解析

フリガナ

代表者氏名

タカハシ キヨヒサ

高橋 清久

ローマ字

所属機関

国立精神・神経センター

所属部局

職  名

部長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

現在,そううつ病の成因は明らかではないが,周期性の発病,気分の日内変動,早朝覚醒などのリズムの異常が昔から認められており,このリズムの異常が病因そのものではないかという仮説がある。その仮説の正当性を調べる目的で,そううつ病患者の直腸内体温の長期測定を行い,そのサーカディアンリズムの解析から病状とリズム異常の相関を探る。


目的 現在,躁うつ病の成因は明かではないが,周期性の発病,気分の日内変動,早朝覚醒などのリズム異常が昔から認められており,このリズムの異常が病因そのものでないかという仮説がある。その仮説の正当性を調べる目的で,躁うつ病患者の直腸内体温の長期測定を行ない,そのサーカディアンリズムの解析から症状とリズム異常の相関を探る。
方法 RDC診断基準に合致する躁うつ病患者5名を対象にその病期(延べ8回)と寛解期(延べ3回)において4−7日にわたって,直腸内体温の記録を行なった。記録にはトップ社製記録装置を用い,表示される体温を一時間毎に読み取り,記録した。体温リズムの解析には,ベイズ型季節調整プログラム(BAYSEA)を周期成分の滑らかさをも要求する形に改良したものを用いて,Trend,周期成分と雑音部分に分解した。このような周期成分から最高および最低体温の出現時刻を求めた。
結果
Trend成分:全例において病期と寛解期の区別なく,Trend成分は水平線となり,測定期間内はすくなくとも体温レベルは経過とともに上昇あるいは下降するといった傾向は全くみとめられなかった。
周期成分:寛解期では明らかな24時間の周期性が全例において認められた。うつ病期では3回の計測で異常がみられ,残りの5回は正常者と同様明らかな24時間周期を示した。異常が見られた3回の計測では,1例は計測期間中一貫して周期が24時間よりも短縮した不規則な波形を,1例は計測前半は24時間周期がみられたにも拘らず後半の3日に平坦化した波形を,残りの一例は4日間の計測中1日のみ周期の短縮を示した。
最低体温の出現時刻の比較:寛解期では全例最低体温の出現時刻が1−4時と睡眠時間帯であり,最高体温出現時間帯は13−19時の午後の中間帯であった。うつ病期では4例がほぼ寛解期とどうようの結果を示した。周期成分が不明であった3例はいずれも多かれ少なかれ異常を呈した。その異常はもっぱら最低体温の出現時刻が大きく変位するというものであった。
考察 今回用いた統計処理法によって3成分を抽出した結果うつ病期の一部の記録に周期成分および最低体温出現時刻の異常がみられた。今後この2成分について解析を行なうことによって,うつ病期の体温リズムの異常性ついてその性質や頻度といった面から解析が可能であることが示唆され,本解析法が有用であると思われる。周期成分の異常と最低体温出現時刻の異常とは同一計測時に見られることが多いため、これら2成分の相関性が示唆された。しかしながら今回の解析対象例は11例と僅かであり今後症例を重ねて検討する必要がある。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

第3回臨床時間生物学研究会に発表予定
昭和63年9月25,26日 於東京


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

そううつ病患者の直腸温を病期および寛解期の双方で4〜7日にわたって連続記録する。その記録から体温リズムの周期,振幅などを求め,病期と寛解期の差,症状とリズム異常の相関などについて検討する。
体温は覚醒時には次第に上昇し,睡眠中に下降するという典型的な日内変動があるが,その間体温は種々の要因によって変化する。そのため24時間内での最高値,最低値を求め,それからリズムの周期および位相の変化を検討するためには,体温の日内変動パターンのスムージングを行う必要がある。この過程を統計数理研究所で開発されたプログラムを用いて実行し,結果の解釈ならびに必要なプログラムの改変を進める。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

赤池 弘次

統計数理研究所

荒畑 恵美子

統計数理研究所

山崎 潤

埼玉医科大学