平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−76

専門分類

7

研究課題名

カイコの繭型の品種分化に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ナカダ トオル

中田 徹

ローマ字

所属機関

 

所属部局

職  名

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

現在絹生産のため飼育されているカイコ(Bombyx mori)は野生種のクワコ(B.mandarina)に由来し,長い年月をかけて世界各地に適応放散して,地域独特の品種分化が進んだものと推定されている。その繭型は球状又は楕円状からピーナッツ状に至るまで,品種により複雑に分化している。その生物統計学および遺伝学的検討は,生物進化や類縁関係を考える上で重要な手掛りとなるので,統計学的手法により解析を行なう。


カイコ((Bombyx mori L.)は現在世界の50カ国以上で,農業生産の対象として飼育されている昆虫であり,いうまでもなく,幼虫の分泌する絹タンパクを繭として生産・収かくし,絹製品の原料として広く利用している。一方,生物学的な観点から,カイコの品種分化のプロセスを考えると,その起源は中国であり,飼育馴化の過程で,野生種にみられた幼虫の移動能力が著しく低下し,成虫の飛翔能力を失ない,また絹生産値力は品種改良によって飛跳的に上昇するなどの大きな変化がみられ,環境条件の異なる各地域に適応した品種が形成されたものと推定されている。
その間に幼虫の眠性や化性などの生理的変化や,繭形質についても,繭重,繭色,繭型など各地域で分化しており,生物の進化を考える上で興味深い問題を提起している。この中で繭型については丸・楕円・俵・紡錘・ピーナッツ状など複雑な形状に分化しており,この形質も品種分化を探る手がかりの一つとして重要である。しかしながら,形態計測自体,極めて煩雑であり,また正確なデータ収集が困難であるという特徴があるが,筆者が近年開発中の画像処理システムはこれらの計測過程を容易とすることに成功したので,繭型の遺伝的分化に関する実験的検討が可能となった。
そこで繭の形態に関係する諸変数として,長径・短径・長幅率・断面積・体積の推定値等を得て,品種特性の解析を行った。さらにこれらの形質発現を支配する遺伝的要因の検討にすゝんでいる。現在までの成果は,繭型変数を組合せた多変量解析を行ない,品種間の遺伝的類縁関係を判別分析やクラスター分析によって明らかにし,アイソザイムなどの生化学的分析のデータとの整合性,交雑後代の形質発現の解析等に進んでいる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

NAKADA.T(1989)
On the Measurement of Cocoon Shape by Use of Image Processing Method,with an Application to the Sex Discrimination of Silkworm,Bombyx mori.The 6th International Congress of SABRAO,957−960
中田徹・山村智通(1990)
カイコの繭型に関係する遺伝的要因について
(日本蚕糸学会第60回大会発表予定,1990.4)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

筆者は現在育種学的な見地から,絹生産の基礎となるカイコの繭の遺伝学的研究を続行中であるが,近年開発した生物の形態測定のための画像処理システムにより,繭の形態分析が可能となった。
そこでカイコの多くの保存品種を用いて,品種固有の繭型を計測し,得られた繭型に関する諸変数の変異性の分析を行ない,また変数相互の関係を精査することによって,雌雄や品種間の差を検討する。これらのデータは品種分化の過程を解明するのに有効であり,ここで必要とされる多変量解析等の統計学的手法について専門研究者との共同研究を要望する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

村上 征勝

統計数理研究所