平成282016)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

28−共研−2031

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

来場者調査研究における展示観覧行動の行動計量学的検討

フリガナ

代表者氏名

マエダ タダヒコ

前田 忠彦

ローマ字

Maeda Tadahiko

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

23千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

【研究目的の概要】
本研究は、科学イベントに参加する市民の展示観覧行動に対して、行動計量学的アプローチを用いた統計的な検討を行うことによってその性質の理解を促進し、来場者調査研究(ビジター・スタディーズ・リサーチ)における調査方法論と議論の精緻化に資することを主な動機としている。これまでに、主に公的科学研究機関が開催する一般公開日(オープンハウス)を利用した3回の来場者調査からのデータを用いて、科学コミュニケーション活動に参加する来場者の「特異性」および「多様性」の理解をめざし研究を行っている。2012年度および2015年度に実施した来場者調査においては、統計数理研究所と分子科学研究所との協同研究として行っている。
本研究全体の目的は、以下の3点に要約される。
1. 科学イベント来場者の特性の記述(前述の特異性の理解)
2. 展示観覧行動の多寡に寄与する来場者特性の解明,特に文化資本の寄与に関する検討(前述の多様性の理解)
3. 展示の種類・内容の選好に寄与する来場者要因の解明(前述の多様性の理解)


【成果(経過)の概要】
 上記研究目的のうち、本年度は主に課題1および課題2についての論文執筆と、課題2についての学会口頭発表を行った。
 科学イベント来場者の特性については、「日本人の国民性調査」における日本の科学、経済、および芸術に対する国民の意識を問う項目と同一の質問項目を来場者調査に設け、2つの調査の回答分布の違いを比較することで統計的に検討した。比較に用いたデータは、2013年度に実施された「日本人の国民性調査」データと、2012年度に分子科学研究所が実施したオープンハウス来場者に対して実施したアンケート調査(1,126名の来場者に対する全数調査、回答者566名、回収率50.3%)のデータである。また、科学・技術文化資本および文学・芸術文化資本の保有量について、日本国民に対して準代表性のあるデータ(調査会社が保有するパネルに対して実施したWebアンケート調査1,000名)と2012年度の分子科学研究所来場者調査で同一の尺度(8項目5件法で構成)を設け、回答分布を比較した。
 結果として、科学イベントの来場者は、日本国民一般と比較して、「科学の価値」についてはより肯定的な態度を示すものの、「科学の水準」、「経済の水準」、「芸術の水準」についての評価には差がみられないことが明らかになった。また、科学イベントの来場者は、日本国民一般と比較して、科学・技術文化資本のみならず、文学・芸術文化資本の保有量が高い人々であることが示唆された。これらの結果を論文としてまとめ、英国の国際ジャーナルであるPublic Understanding of Science誌に投稿し、2017年3月現在査読後修正中である。



 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【学会発表】
加藤直子、前田忠彦、岩橋建輔(2016)「複数の測定法による展示観覧行動データの基礎分析:科学コミュニケーション活動事例の検討」、『第44回日本行動計量学会大会』於札幌学院大学、2016年9月2日.

本課題に関係する,2016年度よりも前の研究成果については下記の通りとなっている:
[1]加藤直子・前田忠彦 (2013). 科学コミュニケーション活動を通した研究所来場者の展示見学行動分析, 日本行動計量学会第41回大会発表論文集.
[2]加藤直子・前田忠彦 (2014). 科学研究所来場者の展示見学行動と文化資本の関連に関する行動計量学的研究, 日本行動計量学会第42回大会発表論文集.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 対面の研究会合は研究組織を構成する2名の研究打合せとして,主に統計数理研究所において実施した。
第1回 2016/ 6/ 3- 4 於統計数理研究所
第2回 2016/ 9/ 2 於札幌市内会議室(日本行動計量学会参加に合わせた)
 第3回 2016/10/13-15 於統計数理研究所
 第4回 2017/ 1/19-21 於統計数理研究所
 第5回 2017/ 3/15-17 於統計数理研究所

 上記の他に,Skypeを利用したオンラインの打ち合わせを適宜実施した。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

加藤 直子

茨城大学