平成172005)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

17−共研−2066

専門分類

9

研究課題名

炭素循環における多機能木質バイオ資源利用の環境経済分析

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto Atsushi

所属機関

東北大学

所属部局

大学院環境科学研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的:
 環境保全に向けた森林資源の役割が益々重要視されている中,現状の我が国の森林を取り巻く経済環境下では,再造林の放棄あるいは間伐などといった管理そのものの放棄が問題視されている。管理放棄の背景には,将来的な価格の低迷などと言った不確実要素の増減が森林所有者の管理意欲に大きな影響を与えていることが考えられる。
 その一方,世界的な動きとしては,1997年の京都会議以降,地球温暖化防止に伴うCO2等排出削減への取り組みが盛んになり,各国様々な措置が打ち出されている。また,国連気候変動枠組条約の中で二酸化炭素の吸収源として森林が規定され,世界的規模で温暖化防止策における森林の役割が重要視されるようになった。わが国では2001年の京都議定書の批准を背景に,適正な森林管理による炭素の吸収促進が急務となった。その背景には,適正な森林管理の基で,はじめて炭素吸収などと言った森林の持つ様々な公益的機能が発揮されると考えられているからである。
 森林資源は景観などと言った環境面での役割と同時に,木材生産と言った木質バイオ資源利用としての経済面での役割も持っている。本研究では,森林資源の木質バイオ資源としての機能に対し,炭素循環における環境経済評価を行うことを目的とした。

研究成果:
 まずフィールド調査(福岡県八女郡星野村村有林)により林分成長に関するデータ収集を行い,ランダム効果を伴う成長曲線モデルと既存の森林密度管理モデルを用いて,単木成長を考慮できる森林成長予測モデルを構築した。次に聞き取り調査により木質バイオマスエネルギー利用に関わる基礎情報を収集した。これらの結果を用いて,動的計画法による林分経営最適化モデルを構築し,現行の間伐補助金体制(一般補助金:対象樹齢15年〜35年金額幅181〜281千円/m3,特定間伐補助金:対象樹齢15年〜45年金額幅181〜297千円/m3)における植林から木材生産に伴う炭素収支分析を行った。
 分析の結果,補助体系別の平均炭素貯留量の差は0.18〜0.29Ct/ha・年であり,(1)支給なし,(2)一般補助,(3)特定間伐の順で多いことがわかった。さらに,それぞれの最適間伐計画に基づく炭素収支を分析した結果,支給条件別の平均炭素貯留量の差は0.18〜0.29Ct/ha・年となり,1計画期間内における間伐量が少ない程平均炭素貯留量が多いことが分かった。一方で,木材生産・加工で発生する廃材のバイオマス利用によって削減できる炭素の量は,0.38〜0.43Ct/ha・年であった。すなわち,炭素貯留量への影響は補助支給条件の違いよりも,素材生産や製材工程で発生する廃材利用の有無の方が大きいことが明らかになった。従って、木質バイオマスという視点に立てば、林分における炭素貯留量の増加を目的とするよりも,効率的な木質バイオマス利用を目的とした補助金支給体系を立案する方が,環境経済的には温暖化防止における炭素削減効果が期待できると考えられた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文:
吉本 敦・?原宏和・二宮嘉行 2005 多変量線形モデルによる林分成長要因探索のための変数選択、日本森林学会誌 87:504-512

?原宏和・吉本 敦・二宮嘉行 2006 複数の成長パターンを持つスギ単純同齢林における炭素固定予測、pp.63-83、「森林資源管理と数理モデル」Vol.5.(吉本・近藤・広嶋編集)、森林計画学会出版局、宇都宮、219p.

学会発表:
吉本 敦、第22回国際林業研究機関連合世界大会(XXII IUFRO World Congress)(August 8 - 13, 2005, Brisbane, Australia)にて研究発表「Evaluation of carbon sequestration and thinning regimes within the optimization framework for forest stand management」

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

二宮 嘉行

九州大学

能本 美穂

九州大学

柳原 宏和

筑波大学