平成212009)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

21−共研−2028

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

3

研究課題名

疾病に対する集団戦略・高リスク戦略の観点からのコミュニティ評価指標の検討

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura, Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は,限られた既存データを有効に活用し,各都道府県における集団戦略(住民全体への対策)と高リスク戦略(個々の疾患に対して高いリスクをもつ集団への対策)の立案・評価につながる指標を開発することである。
これまで申請者らは,脳卒中を主眼に置き,国・都道府県レベルの死亡動向の変動要因を中村のベイズ型コウホートモデルに基づいて分析を行い,加齢のほかに,人々が異なる時代背景を歩むなかで形成された「世代の違い」や,これまでの脳卒中対策を含めた社会環境全体の変化など「時代」の影響のあることを明らかにした。このうち時代効果と世代効果は,それぞれ各都道府県で実施した集団戦略と高リスク戦略の成果を反映すると考えられた。そこで平成20年度は,各都道府県についての時代効果と世代効果を主成分分析することよって,時代効果から‘住民全体’への対策の「成果の大きさ」指標と「近年の傾向」指標を,世代効果から‘特定世代’への対策の「成果の大きさ」指標と「成果の現れた世代」指標を抽出し,これらが保健医療対策の歴史・時代背景・社会統計と関連のあることを確認した。
平成21年度においては,さらに3効果を利用した都道府県レベルにおける将来の死亡推計を中心に検討を行った。従来用いられてきた手法では,当該世代がもつ特性(リスク)を考慮していないこと,現在から将来へ向けた戦略が与える影響を加味していないことなどの欠点が存在した。これに対して申請者らは,過去の死亡動向の分析により明らかにした当該集団の脳卒中死亡に関する年齢効果・世代効果と,現状の集団戦略が継続された場合と中断(変更)された場合を想定した2つのシナリオによる時代効果を用いて推計を行った。この手法で導き出された推計結果は,各都道府県の住民特性をより反映したものであり,2つのシナリオに基づく結果を比較することによって今後の集団戦略のあり方を検討するうえで役立てられるものと考えられた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【脳卒中死亡率の分析について】
平成21年度は,1)の学会発表 および 2)の論文発表を行った。
1) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2009). Prefectural and Japan future time trends in the cerebrovascular disease mortality projections, based on age-period-cohort analyses, Asia Pacific Association for Medical Informatics 2009, Proceedings, P-62.
2) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2009). New indicators for the evaluation of community policies based on period and cohort effects in cerebrovascular disease mortality rates, Japan Hospitals, 28, 79-85.
3) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2008). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の対策評価指標としての検討(2), 日本公衆衛生雑誌, 55, 10, 13.
4) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2007). Constructing indicators to evaluate community policies based on period and cohort effects on Cerebrovascular disease mortality rates, The 39th Conference of the Asia-Pacific Academic Consortium for Public Health, Abstract Book, 191-192.
5) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2007). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の脳卒中対策評価指標としての検討, 日本公衆衛生雑誌,54, 10, 417.
6) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). わが国における20世紀の脳血管疾患死亡率の変動要因と今後の動向, 日本公衆衛生雑誌,53, 7, 493-503.
7) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2006). 都道府県別にみた脳血管疾患死亡率のAge-Period-Cohort効果−6都道府県における試み−, 日本公衆衛生雑誌, 53, 10, 605.
8) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). 脳血管疾患の病型別死亡数の将来推計−ベイズ型ポアソンAge-Period-Cohortモデルに基づく−, 第26回医療情報学連合大会抄録集(CD-R), 158 (P18-1).
9) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2005). 日本の脳卒中死亡数の2050年までの将来推計, 日本公衆衛生雑誌, 52, 8, 611.
10)三輪のり子・成瀬優知・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(1報)脳梗塞, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.
11)成瀬優知・三輪のり子・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(2報)脳出血・クモ膜下出血, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.
【脳卒中罹患率(富山県)の分析について】
1) 三輪のり子・成瀬優知 (2004). 出生コホート分析を用いた脳卒中罹患率の検討−富山県脳卒中情報システムより−, 厚生の指標, 51, 11, 10-16.
2) 三輪のり子・成瀬優知 (2003). 出生コホート法を用いた脳卒中発症率の比較−富山県脳卒中情報システムより−, 日本公衆衛生雑誌, 50, 10号, 517.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催はありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大野 ゆう子

大阪大学

三輪 のり子

千里金蘭大学