昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−28

専門分類

4

研究課題名

調査にもとづく地域住民の生活行動と健康管理の統計的研究

フリガナ

代表者氏名

キシダ タカヤ

岸田 孝弥

ローマ字

所属機関

高崎経済大学

所属部局

経営学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地域住民の生活様式と住民の健康との関連性を既存の調査資料をもとにして,統計的手法により分析する。調査資料としては,「作業と生活に関するアンケート調査」及びTHI(東大式健康調査票)の二つの質問紙と地域住民の体力調査結果を使用する。既存のこの三つの調査結果をもとに,地域住民の生活行動が健康に及ぼす影響を統計的手法により明らかにし,健康管理のための統計指標づくりを検討する。


1.目的と方法
地域住民の生活様式と住民の健康との関連性を既存の調査資料をもとに統計的方法を用いて明らかにするために本研究を行った。調査資料としては東北地方(3県),中国(1県),四国(2県),九州地方(4県)の合計10県の住民(某清涼飲料メーカー系列の社員)622人に対して行った作業と生活に関するアンケート調査及びTHI(東大式健康調査票)の二つの質問紙と同時に集めた体力調査結果を用いた。
データーの処理は大隅昇教授の指導のもとに行った。(主としてSLMiCROのプログラムを使用して行った。)
2.研究成果:(1)作業の生活に関するアンケート項目のうち,作業中の単調感と健康度について調べたところ,「単調である」と訴える人ほど,THIの多愁訴(一般的な疲労感,不定愁訴)が有意に多く,作業特に単調作業が疲労にもとづく不定愁訴と関わりがあることが確められた。
(2)作業中の繁忙感(忙がしい)についてみると,繁忙感を訴える人ほど多愁訴及び情緒不安定の程度が有意に強くなっており,企業内の生活行動が一般的な疲労感から精神的な負担感まで影響を及ぼしており,健康への影響がうかがわれた。
(3)身体的な疲労感もTHIの尺度でみると多愁訴及び情緒的不安定へ投影されていることが分った。
(4)精神的な疲労感についても,THIの尺度では多愁訴,情緒的不安定に最も反映されていた。
(5)このように一般住民が生活を支えるために工場で働らき,その結果として各種のストレスを受け,健康に影響がでてくる分けであるが,その端緒として,単調感,繁忙感,身体的,精神的疲労感としてとらえることの重要性が明らかにされた。これを裏付けるものとして,「次の日に休みたいと思うか」という質問で「いつも休みたい」と答えた人々ほどTHIの多愁訴,呼吸器,消化器,直情径行性,情緒不安定,抑うつ性,生活不規則性の尺度の訴えが有意に多くなり,健康が害されていく様子がよく示されていた。
(6)なお今回の研究では,個人レベルでの健康管理をどのようにして行うかを考えてみた。そのための1つの手がかりとして,目の疲れの訴えと,その症状の広がりがTHI健康尺度でどのようにとらえられるかを検証してみた。その結果単に「眼が疲れる」との訴えでは多愁訴,情緒不安定の2尺度のみで有意な訴えの増加がみられたものが,眼前部症状,視蒙,頭痛等眼科的症状からみた訴えの広がりが増すにつれて,多愁訴,呼吸器,目と皮膚,消化器,抑うつ性,情緒不安定,直情径行性,生活の不規則性等の健康尺度への影響がはっきりと表われてきており,個人の日常感ずる訴えから健康水準を推測することの可能性が見い出された。
(7)なお体力との関係については今回の資料では明らかではない。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

平成2年1月16日〜1月19日(4日間)に群馬大学で開催予定の「精神・保健調査,その方法と応用」
(Mental Health Survey−Methods and Application)国際シンポジウム(開催責任者群馬大学医学部公衆衛生学教授 鈴木庄亮博士)にて「眼の疲労とTHIの関係について」(仮題)と題して発表する予定である。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

1.地域住民の生活行動に関する既存の調査資料(800サンプル200項目)を大型電子計算機により,統計的に吟味解析し,客観的に評価する。
2.既存の体力調査資料を加えて,上述の解析結果について,評価の妥当性を検討する。
3.1及び2の解析結果をもとに,健康管理のための統計指標づくりの方法論を検討する。
4.地域住民のための健康管理マニュアル作りを検討する。(特に地域差について考慮したマニュアル作りを検討する。)
5.個人レベルでの健康管理ができるように,健康管理マニュアルの作成を考える。従来の地域レベルでの発想から,個人レベルへと移行し,個人の健康管理の方策を考えたい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大隅 昇

統計数理研究所

斎藤 むら子

早稲田大学