平成302018)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

30−共研−6

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

7

研究課題名

金融資産価格収益率時系列のマルチフラクタル解析

フリガナ

代表者氏名

タカイシ テツヤ

高石 哲弥

ローマ字

Takaishi Tetsuya

所属機関

広島経済大学

所属部局

経済学部教養教育

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

本研究では、金融時系列のマルチフラクタル性を測定し、その強度やハースト指数から時系列の効率性について議論する。マルチフラクタル性は、2002年にKantelhardtらによって開発されたMultifractal detrended fluctuation analysis(MDFA)法によって測定する。MDFA法は非定常時系列にも適用可能で、マルチフラクタル性を精度よく測定できることが知られている。MDFA法によるマルチフラクタル解析では、q次の揺らぎ関数が定義され、その関数の傾きが一般化ハースト指数(GH)に対応する。GHは時系列の長期記憶性の強さを測る指標であり、q=2の時にハースト指数に一致する。時系列がランダムウォークをしていれば、GHは一定値を取る。一定値からのかい離の程度がマルチフラクタルの強度に対応し、強度によって時系列の性質を分類することができる。本研究では、金融時系列としてビットコイン価格について解析を行った。マルチフラクタル性の時間変動を見るために1年間隔のデータで区間をずらしながら2012年から2018年までのデータを解析した。更に、流動性指数も測定しマルチフラクタル性との関連を調べた。ハースト指数の値は、2013年以前は0.5以下となり、時系列の性質は反持続的となっていることがわかった。2013年以後は0.5付近の値をとり、効率性が改善しているが、反持続的な期間も現れることがわかった。流動性指数との関連では、2013年以前は流動性が低く、流動性が低い時は時系列が反持続的となっていることが判明した。また、マルチフラクタル性の強度との関連では、強度が小さくなると効率性が高まる傾向が見られるがその傾向は非線形な関係になっていることが分かった。