平成242012)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

24−共研−2092

分野分類

統計数理研究所内分野分類

j

主要研究分野分類

3

研究課題名

森林資源管理に関する汎用性のある成長管理モデルの構築

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto Atsushi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

数理・推論研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 現在,森林の利用に関して,バイオマスエネルギーや炭素固定などの役割が期待されている.また,高度成長期に植林された林分では管理放棄などが見られ,管理が行き届かない状況などがある.これらの役割を実現し管理放棄された林分を再生するためには,森林を適切に管理する指標が必要である.適切な管理にあたっては,森林の成長ダイナミクスを理解し再現する成長モデルが必要であるが,同時に管理者が負担するコストや,経営によって得られる収益などの概算も重要となる.また,自然環境を理解する上で成長ダイナミクスが視覚的に表されるこのとも重要である.これらの見地から,林分所有者に関わらず,管理者や施行者など実際に業務を行う人たちへの業務的指針や,森林の成長を通じて自然環境を学ぼうとする人たちへの教育目的として,より汎用性のあるモデルを構築する必要がある.
 本研究では,森林資源の有効利用に向けて,我が国の様々な樹種について森林成長量の予測と管理が成長に及ぼす影響を定量的に把握し,かつ視覚的に表現できる森林成長モデルの構築を念頭にデータ収集と3D可視化プロトタイプモデルの構築,及び既存成長モデルのパラメータ再推定手法の構築を行った.3D可視化プロトタイプモデルの構築では,樹木1本という単木レベルのモデルの開発を試みるため,根系構造から,樹冠の発達,それらの相関について詳細にモデル化する必要がある.このようなモデル化のため磁場生成による3D位置測定装置による運動解析システムを用いた.
 まず,3D可視化プロトタイプモデルの構築に対し,東北地方(秋田),九州地方(沖縄)において実際に上記運動解析システムを導入し,測定を行った.そして,ここで得られた情報をもとにデータベースを構築し, 3D可視化モデルを構築した.秋田県では,9本のスギの3Dデータを収集し, 根曲がりスギの3D構造再現手法に,高さ毎の年輪解析結果を合わせることによる時系列に沿った樹木成長モデルの解析を行った.また,沖縄では,沖縄島本部町備瀬のフクギ(Garcinia subelliptica)屋敷林において,防風,防砂などのために屋敷林として歴史的に活用されてきたフクギ(Garcinia subelliptica)について,屋敷林の構造と位置や環境的な要因による樹木の形状の違いを明らかにするため,113本のフクギの立木位置を測量し,そのうち47本について3次元データの収集を行い,3Dモデルを構築した.ここでは,各樹木の位置情報をもとに,屋敷林におけるフクギ景観を3Dモデルにより再現した.そして,形状の違いを評価するため,樹木の断面の非対称性を定量的に評価するツールを開発した.さらに,沖縄島"ヤンバルの森"においては,沖縄県における代表的な常緑広葉樹であるイタジイ(Castanopsis sieboldii)の3Dデータを8本について収集した.また,沖縄県名護市大浦湾のマングローブ林においては,空間的な環境の違いによる樹木成長および構造の違いを評価することを目的とし,マングローブ樹木の樹木構造の3D化を行った.環境要因により本数,形状が異なることを想定し,立木密度が低く,直径の大きな樹木が散在する箇所(プロット1)とその近隣でより立木密度が高く,直径の小さな樹木のある箇所(プロット2)の2箇所を選定し,それぞれ20mx20mの調査区を設置した.それぞれのプロットにおいて10本の樹木に対して,3Dデータの収集を行った.更に,マングローブ林の水辺の林縁にある樹高の低い,メヒルギ,オヒルギ,それぞれ1個体について,詳細な3Dデータの収集を行った.既存成長モデルのパラメータ再推定手法の構築では,一般化最小自乗法の応用により,システムダイナミックス的なモデルのパラメータ推定を行い、その有効性について確認ができた.
 今回の研究では,森林成長モデル構築の基礎となる樹木のデータを様々な地域,様々な樹種について収集した.各地域において異なる環境条件が樹木の成長に及ぼす影響を評価するために必要なデータの収集と評価ツールの開発は今後の成長モデル構築に役立てられるであろう.また,本研究では,測量により取得した立木の位置情報に基づいて,樹木の空間的な配置の3D化が可能になった.さらに,松の成長モデルのプロトタイプをGroIMPモデリング環境において開発した.これは構造モデルの1種で,様々なルール(ブランチングルール,枯死ルール,競合ルール等)に基づいて,樹木の成長を予測する.今後は,このモデルの精度の評価と修正を行うとともに,異なった樹種についても同様のモデル開発を予定している.これらの個々の3Dモデルと既存の成長モデルの連結により,今後はこれまでの2D的な成長の描写から3Dへの可視化に向けたモデル構築を行う予定である.
 我が国の森林分野におけるこのような3D位置測定装置による運動解析システムの導入例はまだ少なく,ここでの動作環境のテストおよび導入により得られた様々な知見は,今後,このような最新のシステムの導入により,実際にデータの収集・解析そしてモデル化を行う上で非常に有効な情報源になると考えられる.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表:
Kobayashi, K., P. Surovy, A.Yoshimoto, K. Takata, 2013, Analysis of Standing tree Using A Motion Capture System: Three-Dimensional Stem Model for The Basal Bending of Japanese Cedar (Cryptomeria japonica), FORMATH FUKUSHIMA 2013, March 14, Iwaki Meisei Univ.

Surovy, P., M.Konoshima, A.Yoshimoto, 2013, Nondestructive 3dimensional data acquisition of stem surface: case studies from Okinawa, FORMATH FUKUSHIMA 2013, March 14, Iwaki Meisei Univ.

Surovy P, Toward 3D technology for forest biometrics ISM, Mathematical Modeling for Issues on Ecosystem Services - Theory & Applications - Institute of Statistical Mathematics, Tokyo

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

赤石 亮

なし

加茂 憲一

札幌医科大学

木島 真志

琉球大学