平成292017)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

29−共研−2004

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

臨床データに基づく急性骨髄性白血病予後モデルの開発

フリガナ

代表者氏名

ニシヤマ ノブアキ

西山 宣昭

ローマ字

Nishiyama Nobuaki

所属機関

金沢大学

所属部局

国際基幹教育院

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

29千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究では、急性骨髄性白血病における病態進行を記述できる白血病芽球細胞、エフェクターT細胞、制御性T細胞の細胞濃度を変数とする3変数常微分方程式モデルの開発を行った。白血病に関する既存の数理モデルでは注目されていなかった制御性T細胞を介した間接的免疫抑制機構のモデル化を試み、エフェクターT細胞の細胞移植とともに現在臨床で盛んに試みられている免疫チェックポイント機構をターゲットとした免疫療法のプロトコルの検証および新規設計を念頭に置いた。臨床データに基づいたモデルパラメータの推定を行うために、カルマンフィルターの適用について検討したが、時系列データ数の不足のために収束に至らなかった。このため、全パラメータの推定を断念し、一部のパラメータについてのみSASのMCMCプロシジャーを用いて推定するに留めた。カルマンフィルターによる全パラメータの推定については継続課題とした。MCMCプロシジャーによるパラメータ推定においては、Kanakryらにより報告されている誘導化学療法後のT細胞回復の時系列データからエフェクター細胞であるCD3(+)CD8(+)細胞と制御性T細胞であるCD3(+)CD4(+)FoxP3(+)細胞の細胞濃度の回復曲線を算出して用いた。パラメータ推定値を用いて、未知パラメータの空間で本モデルのダイナミクスの探索を行った結果、2つの安定定常状態が広いパラメータ範囲で存在していることが明らかとなった。それぞれの安定定常状態での3つの細胞濃度は、急性骨髄性白血病における完全寛解状態(白血病芽球細胞濃度が低い状態)と病態が進行した状態(白血病芽球細胞濃度が高い状態)での臨床的に妥当な細胞数を示した。また、2つの安定定常状態の吸引域の境界近傍を通過する解軌道に対応するダイナミクスが、完全寛解の維持時間と生存率との負の相関、再発の有無を予想する微小残存病変(MRD)閾値の存在など、急性骨髄性白血病の臨床知見と整合することを明らかにした。このように臨床知見と整合する本モデルを用いて、エフェクターT細胞移植の臨床プロトコルに基づいたモンテカルロシミュレーションを行った結果、再発抑制曲線など臨床アウトカムと定性的に整合することを示した。以上より、本研究で提案したモデルは、急性骨髄性白血病の治療として現在盛んに研究されている免疫細胞療法の設計に寄与する可能性が示された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1. Yoshiaki Nishiyama, Yutaka Saikawa, Nobuaki Nishiyama,
Interaction between the immune system and acute myeloid leukemia: A model
incorporating promotion of regulatory T cell expansion by leukemic cells,
BioSystems 165(2018)99-105.

2. Yoshiaki Nishiyama, Nobuaki Nishiyama,
Modeling immunotherapy and outcomes in acute myeloid leukemia,
The Science Reports of Kanazawa University 61(2018)25-38.


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研究参加者一覧

氏名

所属機関

三分一 史和

統計数理研究所