平成19（2007）年度　重点型研究実施報告書

課題番号	19−共研−4303		分野分類			統計数理研究所内分野分類			g
						主要研究分野分類			2
研究課題名	レヴィ過程の統計的漸近推測の研究とその応用
重点テーマ	確率解析と統計的推測
フリガナ 代表者氏名	マスダ　ヒロキ 増田　弘毅				ローマ字		MASUDA Hiroki
所属機関	九州大学
所属部局	大学院数理学研究院 数理科学部門 社会数理講座
職　　名	助教
配分経費	研究費	40千円		旅　費		180千円		研究参加者数		8　人

研究目的と成果（経過）の概要

レヴィ駆動型確率過程は，近年，ファイナンス，保険数理，数理物理など，様々な実在現象を扱う応用分野においてその需要を増してきている．これらのモデルに関する漸近推測において不可欠であるのが種々の極限定理およびポアソン空間上の確率解析であり，これらの構築を研究目的とする．本年度は，主として以下の結果を得た．

石川は，jump-diffusion過程に対する期待効用最適停止問題を，擬微分作用素を使ったHJB方程式を解くことにより解決した．また，レビ−過程に関連した確率変数の連続性と絶対連続性について最新の結果までを整理し，未解決問題に取り組んだ．
清水は，ジャンプ型の確率過程による離散観測モデルにおいて，ジャンプの特徴づけとなるレヴィ測度
に対する汎関数推定やモデル選択の研究を行い，その理論の保険数学への応用についても研究した．また，離散観測によるジャンプの判定法に関する研究を行った．ジャンプ検出のための閾値をデータから選択する方法を提案し，その理論的正当性に関する研究を行った．
西山は，Nishiyama (2007, AP) の応用として加法過程のノンパラメトリック推測を研究し，漸近有効推定量や，ジャンプ測度の時間的一様性の検定統計量を定式化した．
増田は，複合ポアソン型飛躍付拡散過程に関する統計推測において重要な安定性のための十分条件を，確率過程論の言葉を用いない容易に検証できる形で与えた．また，高頻度離散観測される非正規安定レヴィ過程の推測における非正則な現象（フィッシャー行列が常に退化する）を明確化し，それを踏まえて，最適性を犠牲にして同時（非退化）推定量を構成してその一次漸近挙動を導出した．
増田・森本は，夜間および昼休みに取引がなされない日本市場における実現ボラティリティ(RV)の変形を定式化し，一種の最適ウェイトの公式を導出して実証分析を行った．変型版RVにおいては，従来のRVと比較して，RMSEの減少が顕著に見られ，従って予測精度改善の基本的な道具となることを示した．また，Lee and Mykland (2007) によるmultipower variationを介したジャンプ (突発的変動) 検出法を用いて，様々な時間尺度での高頻度経済データ系列におけるジャンプの検出に関する実証分析を行ってその妥当性を検証した．

当該研究に関する情報源（論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等）

[発表論文・プレプリント]
・ Ishikawa, Y. (2008), Optimal stopping problem associated with jump-diffusion processes, submitted.
・ Masuda, H. (2007), On ergodic property of diffusions with jumps of compound Poisson type.
・ Masuda, H. (2007), Joint Estimation of Discretely Observed Stable L'evy Processes with Symmetric L'evy Density.
・ Masuda, H. and Morimoto, T. (2007), An optimal weight for realized variance based on intermittent high-frequency data. Preprint.
・ Masuda, H. and Morimoto, T. (2008), Empirical Analysis on Jump Detection in High-Frequency Data. (in Japanese)
・ Nishiyama, Y. (2007). On the paper ``Weak convergence of some classes of martingales with jumps''. Ann. Probab. 35 1194-1200.
・ Nishiyama, Y. (August 2006, revised April 2007). Nonparametric estimation and testing time-homogeneity for processes with independent increments. To appear in Stochastic Process. Appl.
・ Shimizu, Y. (2007), Semiparametric estimation of Levy characteristics of jump-diffusion models from sampled data (2007). Proceedings of the Ninth Japan-China Symposium on Statistic, 265 - 270, Hokkaido University, Japan.
・ Shimizu, Y. (2007), Model selection for Levy characteristics in discretely observed jump-diffusion models from the aspect of information criteria (2007). Research Report Series 07-12, Department of Mathematical Science, Osaka University.
・ Shimizu, Y. (2007), Jump-detection method of jump-diffusions from finite discrete samples (2007). Research Report Series 07-015, Department of Mathematical Science, Osaka University.
・ Simon, T. and Ishikawa, Y. (2008), レビ−過程に関連した確率変数の連続性と絶対連続性，統計数理研究所共同研究リポート 213 (2008), 104−132.

[学会発表（ホームページ）]
学会発表情報（および研究成果の情報）の一部は，下記のホームページに記載されている：

清水泰隆，　http://www.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/~yasutaka/presentations.html
西山陽一，　http://www.ism.ac.jp/~nisiyama/index-j.html
増田弘毅，　http://www2.math.kyushu-u.ac.jp/~hiroki/

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

１． 平成１９年１１月２９日〜３０日，研究集会「確率解析と統計的推測」，
報告１４件，参加者２０名．

２． 平成２０年２月１８日，研究集会「確率解析と統計的推測 II」，
報告５件，参加者１０名．

研究参加者一覧
氏名	所属機関
石川　保志	愛媛大学
内田　雅之	大阪大学
清水　泰隆	大阪大学
得津　康義	広島経済大学
西山　陽一	統計数理研究所
森本　孝之	一橋大学
吉田　朋広	東京大学