平成192007)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

19−共研−1002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

バイオサーベイランスのための検定手法の開発とその評価

フリガナ

代表者氏名

タカハシ クニヒコ

高橋 邦彦

ローマ字

Kunihiko Takahashi

所属機関

国立保健医療科学院

所属部局

技術評価部

職  名

研究員

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は保健医療・疫学の分野で重要な疾病地図に関する研究分野のひとつであるが,その中でも「集積性の検定」といわれる,対象イベントがある地域に集積して起こっているかどうかを検討する際に有用となる統計的検定手法の研究である.最近,バイオテロリズムや感染症の流行など,危険な兆候をいち早く察知するためのバイオサーベイランスが欧米を中心に重要な研究課題になってきている.そのための手法のひとつとして,この集積性の検定手法が注目されてきており,実際に米国では集積性の検定によるサーベイランスが行われている.そこで本研究課題では,申請者らが開発した平面における検定手法の拡張を含め,サーベイランスに適用するための時間要素を含めた検定手法の開発を行い,さらに米国で用いられている手法などとの比較のための評価についても検討を行うことを目的とする.
 我々が提案する平面上における集積性の検定法“flexible scan法”に時間変化も含めたspace-time解析に適応できるための拡張したflexible space-time scan 法を考案した. そのうえで,実際の米国でのサーベイランスシステムに利用されているKulldorff博士が提案するcylindrical space-time scan 法との比較を行った.実際の米国でのデータに適用し,flexible scan法がcylindrical scan法では同定できないようなクラスターをうまく同定できる様子がみられた.
 また、これらの手法による同定の精度に関する評価・比較として、我々が平面において提案しているpower distribution、extended powerをサーベイランスの目的を考え、本研究に適用し、その評価をおこなった。
 さらに実際のサーベイランスを意識し、学校欠席数によるサーベイランスのパイロットスタディを行った。これらの結果、提案するflexible space-time scan法をもちいたサーベイランス解析が有用であることが確かめられた。
 今後、さらに実務者が利用できる形でのソフトウェア開発、およびサーベイランス解析を行いながら、さらに統計手法の開発および評価を行い、より適切な手法を提案するよう研究を続けていく予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・ 丹後俊郎・横山徹爾・高橋邦彦. 空間疫学への招待. 朝倉書店. 2007.
・ 高橋邦彦, 丹後俊郎. Flexible space-time scan statisticによる症候サーベイランスの解析. 2007年度日本計量生物学会シンポジウム, 昭和女子大学, 2007年5月26日.
・ 高橋邦彦, 丹後俊郎. 疾病集積性検出のための新たなスキャン統計量. 2007年度統計関連学会連合大会, 神戸大学, 2007年9月8日.
・ Takahashi K and Tango T. Scan statistics for disease clustering. East Asia Regional Biometric Conference 2007, Invited session, University of Tokyo, Dec.10, 2007.
・ 高橋邦彦, 丹後俊郎. 疾病集積性の検定を用いた症候サーベイランス. 第18回日本疫学会学術総会, 東京, 2008年1月25日.
・ 高橋邦彦.疾病の地域集積性評価(GISを利用した地域(空間)集積性を評価する方法).第21回公衆衛生情報研究協議会シンポジウム, 国立保健医療科学院, 2008年1月31日.
・ 高橋邦彦. 疾病地図と統計解析. RIMS共同研究``Statistical Analysis of Various Models''研究会, 数理解析研究所, 2008年3月10日.
・ Takahashi K, Yokoyama T and Tango T. FleXScan: Software for the Flexible Scan Statistics. National Institute of Public Health, 2005-2007.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

丹後 俊郎

国立保健医療科学院

山岡 和枝

国立保健医療科学院