平成262014)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

26−共研−2079

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

8

研究課題名

学際的アプローチによる環境直接支払いの最適化手法の開発

フリガナ

代表者氏名

タナカ カツヤ

田中 勝也

ローマ字

Tanaka Katsuya

所属機関

滋賀大学

所属部局

環境総合研究センター

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

93千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

日本の農業政策は平成17年度の「経営所得安定対策等大綱」を契機として、従来の価格支持政策から特定の経営体を対象とした直接支払制度へと大きく移行しつつある。その中で平成19年度より導入された「農地・水・環境保全向上対策」により、保全型農業を実践する農家への直接的な支援体制が形成されたことは、環境直接支払制度により環境改善を目指す大きなターニングポイントとなった(荘林 2009)。同対策は平成23年度より「環境保全型農業直接支援対策」と名称を変え、内容面の拡充が進むとともに、参加面積も順調に増加しつつある。

しかしながら、国内の環境直接支払制度はまだ黎明期にあり、制度の効率化はこれからの課題である。現行制度では一定の要件を満たしたすべての農家が参加対象であり、支給要件となる農法も限られている。そのため、参加面積の増加に比して環境改善が進んでいるとは必ずしもいえず、多くの流域で水質汚染などの面源汚染は依然として深刻である。

限られた予算で環境改善効果を最大化するためには、効率性を重視した制度設計が必要である。そのために保全型農業の配置を最適化する研究は、1990年代より広く進められている。しかしながら、従来の最適化手法には技術的に大きな制約があるため、先行研究は事象を単純化したものや、対象を小規模な流域に限定したものが大半を占めている。

本研究の目的は、整数計画法にもとづく最適化手法と、物理型の水文シミュレーションモデルを組み合わせ、水質改善にむけた環境直接支払制度の最適化をおこなうことである。この研究により、流域の水環境にとって望ましい保全型農業の組み合わせが示され、制度として注力すべき圃場・農法が明確となる。また、得られた結果を現実の農業政策に反映するため、国内外の環境直接支払制度を事例として取り上げ、運用面での特徴や成果、課題などについて詳細な比較分析をおこなう。

本研究の学術的な特色は(1)整数計画法により、保全型農業の配置・農法の最適化を圃場単位でおこなうこと、(2)単なる最適化分析ではなく、物理型の水文シミュレーションモデルと組み合わせ、現実の政策への適用可能性を具体的に検討すること、の2点である。このように、本研究は学際的なアプローチにより農業環境問題に取り組むものであり、得られた成果を広く発信することで、同様の研究手法が広く普及していくことも期待される。

本研究では上記の目的遂行にむけ,滋賀県近江八幡市の営農集落を対象とした圃場レベルの営農データを収集した。作物選択・耕作方法をはじめ,投入・産出および費用に関する詳細な圃場レベルデータベースを構築し,最適化にむけた基盤として整備した。この作業には当初の予想以上に時間を要したため,整数計画法による最適化分析には至らなかった。ただし前段階の分析として,圃場レベルの稲作効率性に関するパネルデータ・フロンティア分析をおこない,データの信頼性および分析可能性を確認した(藤井・田中 2014)。また,水文モデル(SWAT)を対象流域ににおいて構築した。これらの成果を下地として,次年度の研究課題において圃場レベルの最適化分析を,経済および生態系の両立した農業に向けて実施する方針である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

藤井吉隆・田中勝也(2014)「圃場レベルの異質性を考慮した稲作効率性のパネルデータ・フロンティア分析」農業経営学会2014年大会.

Nagahiro, S. and K. Tanaka (2015) "Estimating the Values of Forest Ecosystem Services Using Inferred Valuation," FORMATH 2015.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

木島 真志

琉球大学

宗村 広昭

島根大学

長廣 修平

滋賀大学

吉本 敦

統計数理研究所