平成202008)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

20−共研−1005

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

3

研究課題名

バイオサーベイランスのための検定手法の開発とその評価

フリガナ

代表者氏名

タカハシ クニヒコ

高橋 邦彦

ローマ字

Kunihiko Takahashi

所属機関

国立保健医療科学院

所属部局

技術評価部

職  名

研究員

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は保健医療・疫学の分野で「集積性の検定」といわれる,対象イベントがある地域に集積して起こっているかどうかを検討する際に有用となる統計的検定手法の研究である.最近,バイオテロリズムや感染症の流行など,危険な兆候をいち早く察知するためのバイオサーベイランスが欧米を中心に重要な研究課題になってきている.そのための手法のひとつとして,実際に米国では集積性の検定によるサーベイランスが行われている.そこで本研究課題では,申請者らが開発した平面における検定手法の拡張を含め,サーベイランスに適用するための時間要素を含めた検定手法の開発を行い,さらに米国で用いられている手法などとの比較のための評価についても検討を行うことを目的とする.さらにその精度よい同定のため, シミュレーション評価, 理論的評価と実データの解析などを繰り返し, さらに適切な統計量, 統計モデルの開発を目指す.
本研究では,まずニューヨーク市の実務担当者との連携によって,我々の提案するFleXScan法を実際のニューヨーク市のサーベイランスデータに適用し,SaTScan法との比較を行った.次に,平面および時間・空間における集積性の検定において、より精度よく集積地域を同定できるよう統計量の改良を試みた.その結果,提案するFleXScan法は従来法(SaTScan法)に比べ複雑な形状の地域でのアウトブレイクをうまく検出できることが確認できた.特にニューヨーク市のサーベイランスデータへの適用についてもよい結果を示すことがわかった.その結果も,理論的,数値的にはもちろん,実務家が見ても解釈できる妥当なものであることが確かめられた.しかしその一方でその理論的検討から,統計量に関する新たな問題点があることがわかった.これらは従来の方法を含め全てのscan法による同定で共通の問題となるが,これまでその点に関する議論はほとんど行われていない.そこでその解決を目指して,新たな検定統計量の検討を行った.いくつの方法についてその精確性が確かめられた.今後さらに改良を行った新たな統計量の開発により,適切なサーベイランスが行えることになると考えられる.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表
・ Takahashi K, Kulldorff M, Tango T and Yih K. A flexibly shaped space-time scan statistic for disease outbreak detection and monitoring. International Journal of Health Geographics, 2008, 7:14.
・ 高橋邦彦, 横山徹爾, 丹後俊郎. 疾病地図から疾病集積性へ. 保健医療科学 2008, 57(2);86-92.
・ 高橋邦彦, 丹後俊郎. 疾病集積性の検定を用いた症候サーベイランス解析. 保健医療科学 2008, 57(2);122-129.
・ 郡山一明, 片岡裕介, 竹中ゆかり, 浅見泰司, 高橋邦彦, 丹後俊郎. 健康危機管理と小学校欠席状況サーベイランス. 保健医療科学 2008, 57(2);130-136.

ソフトウェア
・ Takahashi K, Yokoyama T and Tango T. FleXScan: Software for the Flexible Scan Statistics. National Institute of Public Health, 2005-2009.

学会発表
・ Takahashi K and Tango T. A comparison of SaTScan and FleXScan for outbreak detection and monitoring. The 7th Annual International Society for Disease Surveillance Conference, December 3-5, 2008, Raleigh, North Carolina, USA.
・ Tango T and Takahashi K. A new space-time scan statistic for timely outbreak detection taking overdispersion into account. The 7th Annual International Society for Disease Surveillance Conference, December 3-5, 2008, Raleigh, North Carolina, USA.
・ Goranson C, Takahashi K, Tango T, Cajigal A, Paladini M, Murray EL, Nguyen T, Konty K and Harfisty F. Cluster detection comparison in syndromic surveillance. The 7th Annual International Society for Disease Surveillance Conference, December 3-5, 2008, Raleigh, North Carolina, USA.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

丹後 俊郎

国立保健医療科学院

飛田 英祐

国立保健医療科学院

山岡 和枝

国立保健医療科学院