平成152003)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

15−共研−2050

専門分類

9

研究課題名

日本列島の気候傾度における森林群集の空間構造に関する比較解析

フリガナ

代表者氏名

クボタ ヤスヒロ

久保田 康裕

ローマ字

Kubota Yasuhiro

所属機関

鹿児島大学

所属部局

教育学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は、日本列島の亜寒帯から亜熱帯に至る様々な森林群集の動態を、空間統計を用い
て明らかにすることである。森林の種多様性や構成種の機能型は物理的環境に応じて変異する。し
たがって本研究では、林木の空間配置に関する規則性に基づいて、各森林群集の更新動態を議論し
た。
 北海道、霧島、南西諸島等に設置されている森林群集のモニタリングサイトで野外調査を行い、
群集構成種の個体レベルの空間分布とその動態を解析した。これらのモニタリングサイトではすで
に10年以上のデータが蓄積されているが、本課題での具体的な調査内容は、すでに標識が行われ
ている個体の生残確認、および成長を測定し、モニタリングデータの補充を行った。さらに個体の
空間配置を測量によってデータ化した。
 北海道知床の冷温帯針広混交林では、過去10年間にわたる構成種個体群の動態を解析し、個体
レベルでの競争関係を明らかにした。その結果、時系列上での気象変動に応じて、林木の成長動態
や競争関係も変化することが判明した。群集の動態特性を時系列上で解析した例は未だ少なく貴重
な研究例であり、現在森林生態関係の国際誌に投稿審査中である。また,環境傾度に沿って変化す
る樹木分布パターンを解析するための理論的枠組みを構築し,本調査地のトドマツ個体群に適用し
た。この結果も論文として国際誌に投稿し審査中である。
 北海道十勝川源流部のエゾマツ・トドマツ・ダケカンバ林では、更新が枯死個体の倒木上で行わ
れる。したがって、倒木と生木の空間配置の分布相関を明らかにすることによって、群集の空間構
造動態を明らかにしようとした。この結果は、来年度夏の北方林の自然撹乱に関する国際学会で発
表する予定である。
 霧島の暖温帯針広混交林は、機能型の異なる樹種(常緑針葉樹・落葉広葉樹・常緑照葉樹)から
構成されており、階層・空間構造的に極めて異質性が高い。多様な機能型を有する群集では、ギャ
ップ形成が林分の生産量を有意に高めることを明らかにした。
 南西諸島沖縄の亜熱帯林では、スダジイ実生の個体群動態を、林床におけるリターの空間分布パ
ターンと併せて解析した。本研究では、実生の生残過程に対する、親木の密度効果、地形に伴うリ
ターの蓄積・移動効果の関連性を最尤推定によってモデリングした。この結果は現在、植生関係の
国際誌に投稿・審査中である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Kubota Y.,Kubo H.& Shimatani K.(2004)Spatial pattern dynamics over 10 years in a conifer/broad-leaved
forest,northern Japan.Research memorandum No.910.2004/3/30.The Institute of Statistical Mathematics.
Kubota Y.& Shimatani K.(2004)Effects of litter dynamics on the survival of Castanopsis sieboldii
seedlings in a subtropical forest,southern Japan.Research memorandum No.909.2004/3/29.The Institute
of Statistical Mathematics.
Kubota Y.,Shimatani K.,Nagaike T.& Yoshida T.(2004)Effects of coarse woody debris on the
regeneration of the subboreal conifer/broadleaf forest in Tokachi-Gawa Genryubu Wilderness Area,northern
Japan.The V International Conference on Disturbance Dynamics in Boreal Forests
Shimatani K.& Kubota Y.(2004)Spatial analysis for continuously changing point patterns along a gradient
and its application to an Abies sachalinensis population.Researchmemorandum No.889.2003/9/1.The
Institute of Statistical Mathematics.
Shimatani K.& Kubota Y.(2004)Quantitative assessment of multispecies spatial pattern with high species diversity.
Ecological Research 19:149-163.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

島谷 健一郎

統計数理研究所