平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−101

専門分類

7

研究課題名

東洋医学の臨床評価法

フリガナ

代表者氏名

ツタニ キイチロウ

津谷 喜一郎

ローマ字

所属機関

東京医科歯科大学

所属部局

難治疾患研究所

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

漢方薬や鍼灸などのいわゆる「東洋医学」は数千年の歴史をもち現在でもなお広く用いられている。その使用の妥当性は基本的には歴史的に蓄積された情報を基にしているが、近代の保健サービスの中でそれが用いられる場合、保健行政から臨床における意思決定までの種々のレベルで「無作為比較試験」を代表とする近代的評価法などとどう適応させるかが問題となる。本研究では、近代的評価法の東洋医学の分野への導入の歴史的プロセス、現状、その問題点、さらに解決法について調査研究する。


第3年度として、(1)WHO Guidelines for clinical research on acupuncture(1994)のfollow upとして、1996年9月にNew Yorkで開催された IV World Conference on Acupunctureのなかで、Workshop on Acupuncture Research Methodologyが開催され、日本側の状況とN-of-1 trialについての報告が成された。
(2)日本の代表的な鍼灸雑誌の一つである全日本鍼灸学会雑誌で使われている統計手法の調査が成された。t検定72.5%、X2検定25.7%という現状であるが、それぞれ半数は手法が明記されていなかった。すでに統計手法の誤用が高率であるとの報告もあり、教育、投稿規定、査読などの改善の必要性が浮き彫りになった。
(3) 昨年のサンプルサイズの求め方に関する文献・ソフトのレビューに引き続き、本年は経時測定データ解析法の文献・ソフトのレビュー、また、Visual Analogue Scale の文献レビューを行い、啓蒙的解説記事を書いた。前者は鍼灸のデータの構造から、後者は鍼灸におけるエンドポイントとして多用されるものである。
(4)医療技術評価の世界的なプロジェクトのコクラン共同計画の一環として上記の全日本鍼灸学会雑誌に含まれるRCT/CCTのハンドサーチを開始した。
(5)介入とアウトカム共ソフトなことが多い東洋医学の臨床試験では、対照を何にするかが大きな問題となる。placeboについて、日本での研究史を中心にレビューしplaceboのポジティブな意味を強調する総説を書いた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(1) 七堂利幸:全日本鍼灸学会誌で使われている統計手法.全日本鍼灸学会誌,46(1):14-17, 1996
(2) 七堂利幸:経時測定データの解析法−その文献とソフトの紹介−.全日本鍼灸学会誌,46(1):37-55, 1996
(3) 七堂利幸:鍼灸臨床効果判定で使うVisual Analogue Scale.全日本鍼灸学会誌,46(1):13, 1996
(1) 津谷喜一郎:プラセボの日本受容 - Placeboはのりと薬だ -. In: 山田慶児,栗山茂久(編):歴史の中の病と医学.思文閣出版,1997.3.20
(1)Tsutani K:Background and impact of WHO guidelines for clinical research on acupuncture in Japan. Workshop on Acupuncture Research Methodology in conjunction with IV World Conference on Acupuncture,New York, 21 September 1996.
(2)Kawakita K: Application of N-of-1 trial and C-statistic on acupuncture research. same above.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

〈研究計画〉1)漢方薬・鍼灸の各分野における、近代的評価法を用いた文献の収集とデータベースづくり2)臨床試験論文の質評価のためのクライテリアの収集と分析3)近代以降の日本における鍼灸に関する論争の経時的分析、いわゆる鍼に関する推計学論争に関して収集された文献にもとづきそのリストづくりと解析4)研究プロジェクトの調整のための研究者間の打ち合わせと討論〈統計数理研究所との共同研究実施の必要性〉本研究は、臨床薬理学者、東洋医学の臨床家、教育者を中心に、東洋医学における実際のニーズにもとづいて発案されたものであるが、対象領域が統計学を用いたものであるため、この分野の基本的な資料を保有し、また経験と実績を持つ専門家との共同作業が必須である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川喜田 健司

明治鍼灸大学

桑田 繁

くらしき作陽大学

七堂 利幸

大素堂

西條 一止

筑波技術短期大学

矢澤 一博

?Sマグレインサカムラ商事

柳本 武美

統計数理研究所