平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2031

専門分類

6

研究課題名

地震の続発性・間欠性の調査研究

フリガナ

代表者氏名

コウガ トモユキ

公賀 智行

ローマ字

Tomoyuki Kohga

所属機関

気象庁

所属部局

地震火山部地震津波監視課精密地震観測室

職  名

観測係長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

余震の確率予測が気象庁及び地震調査委員会で実施されている。また,地震調査委員会では各地の活断層等
における地震危険度評価を進め,今後30年間に大地震が発生する確率などとして,その結果が相次いで公表
されている。これらの確率予測では,最尤法などでモデルのパラメータ値を決めているが,その値の推定誤差
が結果に及ぼす効果を十分考慮していない。事前分布等を導入して,余震の確率予測及び活断層等の地震危険
度の評価手法を再検討する。
 平成14年度の共同研究では,余震活動と群発地震活動を調査するとともに,間欠性を示す例として宮城県
沖地震等を取り上げた。
 地震の規模別度数分布を表すGutenberg-Richterの式は,余震についてもかなりよく成り立つ。式中のパラ
メータbは大地震の小地震との発生割合を示すもので,大きい余震の発生確率を予測するのに必要な値であ
る。全世界(1968-99)及び日本周辺(1926-2000)の地震カタログを使用して,b値の統計分布の調査を行っ
た。1926年以降の日本b値の経年変化を見ると,観測機器の変遷の影響と見られる増大傾向が認められた。
 b値の事前分布がガンマ分布であると仮定して,分布のパラメータの値を決めた。ガンマ分布の形状を表す
パラメータφは,最尤法で推定するとφ=55(全世界)などとなったが,最尤推定はかなり偏るので,φ=
26〜31(全世界)及びφ=20〜25(日本周辺)が適当であることが判明した。ガンマ分布に従う事前
分布が与えられたときのb値の推定式も考察し,精度等を評価した。
 糸魚川-静岡構造線の一部である牛伏寺断層のすぐ近くで2002年10月に群発地震活動があり,大地震の前
兆でないかと社会的に大きな話題になった。そこで,群発地震が長野県内でどの程度発生しているのかを急ぎ
調査したところ,「5日間内にマグニチュード(M)2.0以上の地震が5個以上」という条件を満たすものは5
年間に9例であった。糸魚川-静岡構造線の近くで比較的多く発生しているが,2002年10月の群発地震は最
も活発な事例であった。
 活断層や海域で繰り返し発生する大地震について,近い将来再び発生する確率の計算が行われている。地震
調査委員会のいくつかの例を見ると,過去の地震発生時間間隔のデータから求めた標本平均,標本分散等をそ
のままモデル(母集団)の値として使用している。このような置き換えは,データ数が十分多くないと適当で
ない。観測データからベイズの定理で母集団パラメータの分布則を計算し,それを用いて発生確率の確率分布
や期待値を正しく計算する必要がある。地震調査委員会は,対数正規分布モデルを用いて宮城県沖地震の発生
確率を計算し,2001年1月から10年間,20年間,及び30年間における発生確率を約30%,約80%,
及び90%以上とている。しかし,事前分布π(μ,σ2)=1を用いて,ベイズの定理で正しく計算すると
28%,62%,80%となり,20年間及び30年間の発生確率はかなり低下する。同様な研究を釜石沖で
繰り返し発生する地震についても進めている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

岡田正実・伊藤秀美
余震のb値の事前確率分布(2)?世界の大地震の余震系列?,地球惑星科学関連学会合同大会,2002年
5月。
岡田正実
宮城県沖地震の長期発生確率の再検討,日本地震学会2002年秋期大会,2002年10月。
岡田正実
余震のb値の経年変化と地域分布,気象庁精密地震観測室技術報告,第20号,2003年3月
小河原隆広,岡田正実
長野県内の構造線付近で発生した群発地震の調査,気象庁精密地震観測室技術報告,第20号,2003年3月
岡田正実,伊藤秀美
余震のb値の事前確率分布,地震,第55巻,2003年3月
岡田正実
対数正規分布モデルによる地震長期発生確率の計算?宮城県沖地震の再検討?,地震(投稿中)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岡田 正實

気象庁

尾形 良彦

統計数理研究所

小河原 隆広

気象庁

仲底 克彦

気象庁

干場 充之

気象庁

松岡 英俊

気象庁