平成272015)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

27−共研−12

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

7

研究課題名

主成分分析による株式市場の動的リスク分析

フリガナ

代表者氏名

タカイシ テツヤ

高石 哲弥

ローマ字

Takaishi Tetsuya

所属機関

広島経済大学

所属部局

経済学部教養教育

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

 株式市場では、様々な投資家が様々な思惑によって多数の株式が取引されている。それらの株式間には相互作用があり、1つの複雑なシステムを構築している。株式間の相互作用の強さは時間とともに変動し、金融危機のように市場が不安定な時には多くの株式間に相互作用が現れ、リスクがシステム全体に容易に広がり易くなる。従って、株式市場が不安定になっているかどうかみる1つの方法は、株式間の相互作用がどのようになっているかをみることである。株式間の相互作用を測る手法としては、相関係数を測る方法がある。本研究では東京証券取引所で取引された366銘柄の株価の日次データ(1998年1月から2013年12月まで)を利用し、400日の期間で株価収益率間の相関行列を求め、その動的変動を調べた。相関行列の非対角成分の平均値は2000年以降上昇をしており、急上昇する場所が3つ見つかった。それら3つは、1.リーマンブラザーズの破綻、2.東北地方太平洋沖地震、3.FRB QE3縮小観測の歴史的事件と一致し、それらの時点で市場が不安定になっていると考えられる。また、主成分分析から定義したCumulative Risk Fraction (CRF)とCRFの時間変化もそれらの3つの時点で市場が不安定になっていることを示していた。GARCHボラティリティの分析からは、リーマンブラザーズの破綻とFRB QE3縮小観測の事件ではボラティリティクラスタリングが観測され、市場の不安定性が長期に持続していることが分かった。一方、東北地方太平洋沖地震では、ボラティリティクラスタリングは短期で消滅しており、東北地方太平洋沖地震の日本市場への影響は限定的であったと考えられる。ランダム行列理論との比較からは、リスクが高まっているときは、固有ベクトルの成分が均一になり、ランダム行列理論による固有ベクトル成分との違いが大きくなることがわかった。