平成132001)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

13−共研−2061

専門分類

9

研究課題名

小川学術保護林大規模調査区データに対する空間統計解析

フリガナ

代表者氏名

シマタニ ケンイチロウ

島谷 健一郎

ローマ字

Shimatani Kenichiro

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

1 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は、小川学術保護林に設置された大規模森林調査区に蓄積されつつある森林モニタリング
データの有効活用を図れる統計解析手法の開発を目的とする。森林モニタリングは、森林動態の基
礎資料から造林・育林・その他適切な森林管理立案などの応用目的まで広範に利用されるため、そ
のデータの適切な統計処理が要求されている。
 本年度は3回、森林総合研究所等で小川調査区での研究に従事してきている人と野外調査及び視
察を行い、また議論・研究打ち合わせで森林総合研究所を訪れ、研究を進めた。そして、北村系子
森林総合研究所研究員、河野昭一元京都大学教授らが行った、ブナの成木並びに実生個体群の遺伝
子データの解析を主に行なうことにした。
 北村らは、小川学術保護林内30haに生息するすべてのブナ成木の位置を地形図上に落とし、そ
の中に2つの10m×50m実生・稚樹調査区を設け、その中の全個体位置図を作成した。さらにそ
の全個体からサンプルを採取し、アイソザイム酵素6つの遺伝子座について遺伝子型を同定した。
この結果は、Plant Species Biology 1997 の3本の論文で報告されているが、島谷はこのデータの
一部を借りて、データをより有効かつ忠実に反映するモデル構築を行った。
 成木同士で花粉を交換し種子を生産し、自分のまわりに散布した種子が発芽して実生になる過程
を、点過程論における inhomogeneous Poisson process を用いて確率モデルとして定式化した。
それにより、もし花粉や種子が単に距離に応じて移動しただけなら、実際のデータからその距離分
布と各成木の子孫生産力を、データに最も適合するパラメータを最尤法で求める事で数値的に表現
できる。さらにモデルの適合性も統計的に検定できる。実際に北村らのデータに適用してみると、
花粉の移動距離、どの成木がより多くの実生を残したか、種子散布距離の3点を推定できたが、モ
デルの適合性はあまり芳しくなかった。しかし、その原因を考察することで、単なる距離以外の、
どのような生物学的要因が実生生産に働いているか、議論できた。
 結果はまず2001年8月、統計数理研究所 Research Memorandum#に登録し、学術誌Molecular
Ecology に投稿したが、数式表現の過多、一部表現の不明瞭さのため却下された。そこで2002年
3月の生態学会であらためて結果を報告し、その時のコメントも考慮し、2002年4月、Journal of
Evolutionary Biology に投稿した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Shimatani,K.Modeling spatial seedling distribution with genotypes:Applications of
inhomogeneous Poisson process.Research Memorandum No.812.The Institute of statistical
Mathematics.2001/8/10
島谷健一郎 点過程による樹木分布地図の解析とモデリング 日本生態学会誌 51:87-106(2001)
島谷健一郎 プロット内全個体位置図プラスそれらの遺伝子型という型のデータの応用例。第
49回日本生態学会大会 2002年3月29日 講演要旨集p104

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関