平成212009)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

21−共研−2018

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

2

研究課題名

ランダム行列の固有値分布の拡張アンサンブルモンテカルロ法による研究

フリガナ

代表者氏名

イバ ユキト

伊庭 幸人

ローマ字

Yukito Iba

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

一般に,直接のシミュレーションによっては分布の裾の領域のサンプルが得られないような場合には,マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC),なかでも拡張アンサンブル法とよばれる手法群がきわめて有用である.本研究では,この手法をランダム行列の固有値分布,特に最大固有値の分布について適用する.
これまでの研究で,行列要素が独立にガウス分布に従う場合の最大固有値の分布,および,疎行列の場合の最大固有値の分布について,極めて小さい確率が数値的に評価できることを示した.また,グラフのラプラシアン行列の第2固有値についても同様の結果を得た.
本年度の研究では「すべての固有値が負である確率」を同様の方法で扱った.この確率は,生態系のモデルの安定性,ガラス状態の物理,宇宙論などで重要な役割を果たすことが知られているが,従来のサンプリング法では計算が難しく,大きさ10程度の行列でも計算できなかった.すでに前年度に予備的な結果を得ているが,本年度はそれを疎行列などの場合に拡張した.また,アルゴリズムの中のMetropolis-Hastings法の部分について,提案分布をランダムウォーク型に変更したものを実装し,結果に差がないことを確かめた.これらを含めて,結果をまとめて欧文誌に投稿した.
 さらに,グラフのラプラシアン行列の第2固有値についてもより精密な計算を行い,その結果を国際会議で発表した.こちらの結果も欧文誌に投稿中である.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Nen Saito, Macoto Kikuchi, Yukito Iba
Entropy of Graphs with Large Spectral Gap by Multicanonical Monte Carlo
ポスター発表 CCP2009 2009年12月 (Kaohsiung, Taiwan)

Saito, N., Iba, Y., and Hukushima, K. (2010)
Multicanonical sampling of rare events in random matrices,
preprint, arXiv:1002.4499v1.

Saito, N. and Iba, Y. (2010)
Probability of graphs with large spectral gap by multicanonical Monte Carlo,
preprint, arXiv:1003.1023.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

菊池 誠

大阪大学

斉藤 稔

大阪大学大学院

福島 孝治

東京大学