| (研究目的)身体空間認知課題遂行中の脳活動計測とデータ解析と題して、ヒトの左右上肢などの身体運動とその空間位置に関する課題遂行時における認知特性と脳活動の関連について実験を行い、そのデータ解析に関する基礎的な研究を行う。
 介護および医療現場で、高齢者や患者の動作を遠隔計測法により無拘束で計測できるシステムが強く求められており、その開発が期待されているが要求をみたすセンサシステムのみならず、計測手法も存在しないのが現状である。我々は以前から遠隔から無拘束で計測できるセンサシステムの開発に着手している。今年度は、画像と筋電センサによりヒトの身体運動を計測し、同時に脳活動を計測する。これにより、認知課題を用いた実験に基づき、脳内での身体運動の空間的認知特性と脳活動パターンの関連についての基礎的研究を行った。具体的な実施内容は以下のとおりとなる。
 1. 画像と筋電センサによりヒトの身体運動を計測し、同時に脳活動を計測するための空間認知課題について検討した。
 2. 上記に基づき、認知課題を用いた実験から、脳内での身体運動の空間的認知特性と脳活動パターンを計測する。また、空間認知課題についての再検討も行う。
 (研究成果)
 諏訪赤十字病院において医療現場での課題についての研究打合せ実施した結果も踏まえて、ヒトの身体運動計測と同時に空間認知特性に着目し、空間認知課題におけるヒトの身体運動時の脳活動計測をNIRSを用いて実施することとした。
 また、脳活動の計測対象となる認知課題としては、自動車運転課題を選定し、仮想条件化及び実運動下での運転動作実行中の脳活動の計測を行うこととした。空間認知課題としては左右の認知に着目した実験プロコトルを設定した。計測対象部位は前頭前野を中心とした。仮想空間における実験では、VR技術を用いて、視覚教示条件に対する身体運動発現時の脳活動を計測した。実空間における実験では、実際の自動車運転時の脳活動を計測した。
 さらに、実験データの解析手法として、実験データの標本化として、身体運動をトリガとした時間スクリーニング手法を用いることとした。さらに、スクリーニング後にt検定による統計解析手法を用いた。
 解析結果から、空間認知課題が類似している場合、仮想空間における身体運動課題実施時の脳活動と実空間における身体運動課題実施時の脳活動において、今後より定量的に示すことが必要であるが相関性が見込めた。本成果は、介護及び医療現場において、車椅子を操作するための支援機器,或いは操作の代行機器の開発により、高度な硬縮や筋ジストロフィーなどにより自立動作の制限を余議なくされた高齢者や障害者における運動支援システムの実用化における画期的な要素技術となる。また、近年注目されている,脳信号を用いて外部機器制御を行う,Brain Machine Interface(BMI)やBrain Computer Interface(BCI)への研究にも応用が期待される。今後の課題としては、左右で異なる結果が得られた部位に関する検証を中心とし、左右の認知における脳内の処理過程の違いについての考察が挙げられる。加えて、支援機器開発のために、認知過程後の処理過程に関する実験・考察を検討している。
 
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