平成162004)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

16−共研−2053

専門分類

8

研究課題名

犯罪統計データのコウホート分析

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

我が国は,世界の先進諸国の中では例を見ない,犯罪の少ない安全な国といわれてきた。し
かしながら,全国刑法犯の認知件数は平成8年から7年連続して戦後最多を更新するなど,近
年犯罪情勢は悪化の一途をたどっている。治安の最後の砦である刑務所でも,収容定員を大幅
に上回る受刑者の過剰収容状況が続いており,特に,女子刑務所や初犯刑務所においてその傾向
が顕著となっている。
 一般に,人間のライフサイクルの中で犯罪に陥る危険度は青少年期に最も高く,加齢ととも
に減少していくといわれているが,近年の高齢者犯罪は,高齢者人口の増加を上回る勢いで激
増している。また,幼少期に戦争を経験した世代や出生人口の多い世代は,他の世代に比べて
犯罪に陥る危険度が高いとの研究結果もある。したがって,「団塊の世代」700万人が定年を
迎えることにより,年金,雇用,医療など様々な分野に深刻な影響が出るとする「2007年問
題」は,犯罪の分野においても例外とはいえず,対応策を十分に検討しておく必要がある。
 そこで,本研究においては,戦後の日本の犯罪統計をコウホート分析し,年齢,世代及び時
代の各要因について検討を加えることにより,将来,平和で安全な社会を築くために有効な対
策について検討することを目的とする。
 今年度においては,平成15年度に統計数理研究所共同研究で実施した受刑者率のコウホー
ト分析を継続発展させ,昭和27年以降の50年間における新受刑者率について,殺人,強盗,
窃盗,傷害,覚せい剤取締法違反などの主要な罪種別にコウホート分析を行い,年齢・時代
およびコウホート効果を分離することによって,犯罪の変化の構造について明らかにした。
 その結果,判明した事項は次のとおりである。
1.世代効果について
(1)男子では,明治36年から昭和57年生れの中で最も新受刑者率の高かった世代は,ほとん
どの罪種(刑法犯全体,殺人,傷害,恐喝,強姦,過失致死傷,特別法犯全体,覚せ
い剤,道路交通法)においては,昭和20年を中心とした15年幅の間に生れた世代で
あった。
(2)女子では,明治36年生れから昭和57年生れの中で最も新受刑者率が高かった世代は,殺
人以外の刑法犯においては,昭和10年を中心とする15年幅の世代であった。
2.年齢効果について
(1)男子では,20歳から69歳の間で最も新受刑者率が高かった年齢層は,強盗,恐喝,
強姦及び過失致死傷においては20代前半であった。刑法犯全体,窃盗,傷害及び道
路交通法においては20代後半で最も高かった。殺人,強制猥褻,特別法犯全体及び
覚せい剤においては30代前半で最も高く,横領では30代後半,詐欺では40代前半
で最も高かった。
(2)女子では,総じて男子よりピーク時年齢が年長であった。20歳から69歳の間で最も
新受刑者率が高い年齢層は,刑法犯全体が40代前半で男子より15歳ほど年長,窃盗
が40代後半で男子より20歳ほど年長,特別法犯全体と覚せい剤が30代後半でとも
に男子より5歳ほど年長であった。一方,殺人は30代前半,詐欺は40代前半がそれ
ぞれピークで,ともに男子と同じ年齢層であった。
3.時代効果について
(1)男子では,1967年から2002年の間で最も新受刑者率が高かった時代は,刑法犯全体,
殺人,窃盗,横領及び強姦では1967年,過失致死傷では1972年,特別法犯全体,覚
せい剤及び道路交通法では1982年,強盗,詐欺,傷害,恐喝及び強制猥褻では2002
年であった。
(2)女子は,男子と比較して,総じて新しい時代に新受刑者率のピークがあり,1967年か
ら2002年の間で,刑法犯全体,殺人,詐欺においては2002年で最も高く,特別法犯
全体及び覚せい剤においては1987年で最も高かった。そうした中,唯一窃盗だけは,
1967年で最も高かった。
 今後は,警察の検挙者データについても,受刑者と同様の分析を行い,受刑者の分析結果
と比較検討していきたい。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

市川 守・中村 隆(2004)。
受刑者率のコウホート分析(?),
犯罪心理学研究,第42巻特別号(日本犯罪心理学会第42回大会発表論文集)。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

市川 守

釧路少年鑑別所