昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−89

専門分類

8

研究課題名

日本的な価値観の基礎的研究

フリガナ

代表者氏名

サカモト ヨシユキ

坂元 慶行

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

経済の成熟化,国際化などの言葉に象徴されるように,日本人の環境条件は急激に変化しつつある。したがって,日本人の価値観もまた大きく変わらざるを得ない面が多いが,他方で,牢固として変わらない面も残るものと思われる。この研究の目的は,所内外の最近の社会調査データの,社会経済的地位感覚を含めた多面にわたる質問項目に関して,国際比較をまじえた分析を試みることによって,日本的と思われる価値観を析出し,新たな質問文の可能性を検討するとともに,その過程で必要な統計解析法の開発をめざすことである。


日本的な価値観の場合に限らず,社会現象の統計的な研究を行なうためには質問文の作成だけでなく,実査上の問題についての検討を欠くことはできない。特に,現在の日本の世論調査は実査面でさまざまな問題を抱え,ある種の転機を迎えている。そこで,今年度は,まず第一に,世論調査の実査面での問題点や今後の検討課題を整理し,第二に,価値観の新たな動向を捉えるための質問文を試作し,その一部を「第8次日本人の国民性調査」の質問文として実査に付した。
まず第1の点に関して,現在の世論調査を根底から揺るがしかねない最も深刻な問題として回収率の低下という問題がある。この回収率低下の原因はいずれもいわば時代の産物であり,その意味では,根本的な解決策を見いだすことは容易ではない。しかし,個々の調査の目的を細かく特定し,その目的に対応した技法を個々に考案することによって,いくつかの打開策が可能であると考えられる。たとえば,母数の時間的変化の推定を目的とする場合には通信機器を利用したモニター調査も可能であるし,投票行動や消費者行動などの予測を目的とする場合には,低回収率調査データに基づく予測モデルの開発なども考えられる。
第二に,経済の成熟化,国際化,情報化など,日本人をめぐる社会環境条件の最近の急激は,日本人の価値観にこれまでとは質を異にする変化をもたらすと考えられる。そこで,所内外の最近の社会調査データの,社会経済的地位感覚を含めた多面にわたる質問項目に関して,国際比較をまじえた分析を試みることによって,新たな質問文の可能性を検討した。具体的には,1.将来の国際比較可能性,2.社会や社会階層の成熟度やサイクルを捉えられること,3.人間関係観の変化の兆候を捉え得ること,4.日本人の主観性を捉えること,等を念頭に置いていくつかの質問を作成した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

作成した質問を用いた「第8次日本人の国民性調査」の結果発表が平成元年度に行われる予定であるので,それ以降に,さまざまな形で研究発表を行なう予定である。
また,第一の調査法に関しても,一部は上記調査の報告書の中で成果発表を行なう予定である。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(研究内容)
「13カ国価値観調査」(調査主体:余暇開発センター)の分析を中心に,1955年から1985年までの「社会階層と社会移動調査」(調査主体:日本社会学会など)や,当研究所の「価値意識調査」(1984年調査)などを分析することによって,新たな質問文の可能性を探る。また,この過程で,このような研究に必要な解析法は何かを検討し,その開発をめざす。
(共同研究の必要性)
鈴木は国際比較の面から,直井は社会階層論の面から,武藤と上村は消費経済学の面から,価値観の考察を行う。また,石黒は主として解析法について考察する。坂元は中村は,これらの援助を得て,全般的な分析・考察を行なう。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

上村 淳三

日本経済研究センター

鈴木 達三

帝京平成大学

直井 優

大阪大学

中村 隆

統計数理研究所

武藤 博道

日本経済研究センター