平成212009)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

21−共研−2039

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

5

研究課題名

ベイズ統計に基づく化学物質の確率論的生態リスク評価法の開発

フリガナ

代表者氏名

林 岳彦

ローマ字

Hayashi Takehiko

所属機関

独立行政法人国立環境研究所

所属部局

環境リスク研究センター

職  名

NIESポスドクフェロー

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的
本研究の主要な目的は以下の三つである。(1)環境中濃度データに検出限界値以下のデータが多く含まれている場合にも種の期待影響割合の信頼区間を含めた推定を行うことのできる手法を開発する。(2)解析データに含まれる分類群グループ毎のデータ数の違いを補正することのできる手法を開発する。(3)開発した手法を適用したケーススタディとして東京都において異なる化学物質がもたらす生態リスクの定量的リスクランキングを作成する。

内容と成果
本研究において我々は、ベイズ統計を用いた確率論的生態リスク評価法の開発を行った。まず我々は、ベイズ統計とモデル選択に基づき、生態毒性データに含まれる分類群グループごとの種数の偏りから生じうる潜在的な推定バイアスを補正することができる、種の感受性分布の新たな推定法の開発を行った。また、環境中濃度分布の新たな推定手法として、環境中濃度の地点間分散と地点内分散を明確に区別した階層ベイズモデルの開発を行った。さらに、それらの解析手法の適用により得られる環境中濃度分布と種の感受性分布のパラメータの事後分布サンプルを入力値として用いたモンテカルロシミュレーションにより、種の期待影響割合(化学物質により影響を受ける種の割合の期待値)の中央値および信頼区間の算出を行う方法の開発を行った。
  さらに我々は、上記で開発した確率論的リスク評価法を実際に用いて、東京の河川における主要な9物質の生態リスクの定量化及び比較を行った。結果として、種の期待影響割合の中央推定値を比較した場合には、東京都の河川におけるリスクが最も大きいのはニッケルであり、次いで亜鉛とアンモニアであることが示唆された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表
林岳彦・柏木宜久(2009)ベイズ統計を用いた東京都における化学物質の定量的生態リスク比較.日本リスク研究学会第22回年次大会講演論文集
Takehiko I. Hayashi and Nobuhisa Kashiwagi (2010) A Bayesian method for deriving species-sensitivity distribution: Selecting the best-fit tolerance distributions of taxonomic groups. Human and Ecological Risk Assessment, in press
Takehiko I. Hayashi and Nobuhisa Kashiwagi (under review) A Bayesian approach to probabilistic ecological risk assessment: Risk comparison of nine toxic substances in Tokyo surface waters. Reviewed in Environmental Science and Pollution Research.

学会発表
林岳彦・柏木宜久(2009)ベイズ統計を用いた東京都における化学物質の定量的リスク比較.第22回日本リスク研究学会年次大会、東京
Takehiko I. Hayashi and Nobuhisa Kashiwagi(2009)A Bayesian approach to probabilistic ecological risk assessment: Risk comparison of nine toxic substances in Tokyo surface waters. SETAC North America 30th Annual Meeting
林岳彦・柏木宜久(2009)ベイズ統計を用いた東京都における化学物質の定量的リスク比較.第15回日本環境毒性学会・バイオアッセイ研究会合同研究発表会、東京

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏木 宣久

統計数理研究所