平成232011)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

23−共研−1013

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

7

研究課題名

裁判への市民参加の諸形態に関する統計学を応用した法社会学・法心理学・法言語学の学際的研究

フリガナ

代表者氏名

ホッタ シュウゴ

堀田 秀吾

ローマ字

Hotta Sy?go

所属機関

明治大学

所属部局

法学部

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本研究の目的は、近年の司法改革によってもたらされた市民が刑事裁判に参加する諸形態について、法社会学、法心理学、および法言語学の知見を融合した学際的な探究を様々な統計的手法を用いながら行うことにあった。本研究のテーマとして、以下の大きな二つを設定しいてた。
 一つ目は、裁判員制度がもたらした変化の抽出である。2009年に導入された裁判員制度のスローガンは、「私の視点、私の感覚、私の言葉で参加します。」であるが、判決文などの公開されているデータを対象として、種々の統計的手法を用いて分析し、裁判員制度施行前後で変化した判決理由や量刑との関係を抽出することであった。

 二つ目は、犯罪被害者参加制度がもたらした変化の抽出である。2000年以降、意見陳述制度や被害者参加制度が導入され、刑事司法における犯罪被害者の権利は重要な課題となっている。しかしながら、我が国では被害者参加制度の判断への影響に関する実証的研究が十分な蓄積があるとは言えない。したがって、被害者参加と事実認定者の判断への影響を含めた被害者参加の刑事裁判への影響について考察を進めて行くことであった。

 以上のテーマに関し、研究メンバーはそれぞれの関心に応じて、それぞれが有する専門的知見に基づいて統計学を使った分析を試みた。藤田は、心理学および法学の立場から裁判員制度施行前後の裁判員裁判対象事件の判決文の分析を行い、「裁判員制度の導入が判決に与える影響: 判決文の分析」という論文にまとめた。佐伯は、心理学および法学の立場から裁判員制度施行に先立って2008年に導入された犯罪被害者参加制度に関して、犯罪被害者の刑事裁判への参加が、裁判員裁判における量刑判断にどのような影響を及ぼすかという調査を「Victim Impact Evidenceが陪審の死刑判断に及ぼす影響についての考察?アメリカ合衆国における諸研究の批判的検討」という論文にまとめた。さらに、堀田は、法学と言語学の立場から、実際の事件を基にした、メール文書の書き手の同一性判断に関する統計的分析を、「メール文書の書き手の異同の統計的分析」という論文にまとめた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本研究に関わって、研究チームのそれぞれのメンバーが行った研究をまとめた論文を収録した研究レポート「裁判への市民参加の諸形態に関する統計学を応用した法社会学・法心理学・法言語学の学際的研究」(統計数理研究所共同研究リポート,281)を3月末に発行した。以下、各論文の出典を記す。

<論文発表>
藤田政博「裁判員制度の導入が判決に与える影響: 判決文の分析」『裁判への市民参加の諸形態に関する統計学を応用した法社会学・法心理学・法言語学の学際的研究』 統計数理研究所共同研究リポート, 281, 2-23 (2012)

佐伯昌彦「Victim Impact Evidenceが陪審の死刑判断に及ぼす影響についての考察?アメリカ合衆国における諸研究の批判的検討」『裁判への市民参加の諸形態に関する統計学を応用した法社会学・法心理学・法言語学の学際的研究』 統計数理研究所共同研究リポート, 281, 24-44 (2012)

堀田秀吾「メール文書の書き手の異同の統計的分析」『裁判への市民参加の諸形態に関する統計学を応用した法社会学・法心理学・法言語学の学際的研究』 統計数理研究所共同研究リポート, 281, 46-64 (2012)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究メンバー全員そろっての研究会というものは特に開催しなかったが、少人数チームの特性を活かし、ことあるごとに随時意見交換を行った。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

佐伯 昌彦

東京大学

藤田 政博

関西大学