平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2009

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

データ同化にもとづく放射線帯の物理過程の究明

フリガナ

代表者氏名

ミヨシ ヨシズミ

三好 由純

ローマ字

Miyoshi Yoshizumi

所属機関

名古屋大学

所属部局

太陽地球環境研究所

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

33千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地球周辺の宇宙空間には、放射線帯と呼ばれる高エネルギー粒子群が存在する領域がある。この高エネルギー粒子の時間変動を記述するために、従来、輸送拡散項と消失項からなるFokker-Planck方程式にもとづいて、粒子拡散による位相空間密度の時間・空間発展の計算が行われてきた。一方、近年の放射線帯の研究からは、粒子拡散以外の物理過程が放射線帯の加速過程に影響を及ぼしている可能性が指摘されるとともに、粒子のエネルギーによって異なったふるまいを示すこと可能性が指摘されている。本研究では、上記のFokker-Planck方程式に人工的な項 Sを付け加え、人工衛星観測による放射線帯粒子データとのデータ同化によって、Sの時間変化を高精度に推定し、粒子拡散以外に加速過程が粒子ダイナミクスに及ぼす影響を調べることを目的としている。
本研究において、Sを状態変数ベクトルとしたデータ同化のコードを新たに開発し、粒子拡散過程およびSの変動を、同時に動的に推定することが可能となった。このコードを用いてデータ同化計算を行ったところ、
 ・磁気嵐の回復過程にSが地球半径の4.5倍程度のところを中心に大きな値を持ち、このとき放射線帯の電子の量が増加する。
 ・Sの値は、電子のエネルギーに依存する。
ことが明らかになった。 この結果は、放射線帯の電子の増加過程に、粒子拡散だけではなく、放射線帯内部での加速過程(内部加速過程)が寄与していることを意味しており、本研究の手法を用いることによって、 内部加速過程がいつ、どこで発動するかを特定することが可能となった。なお、粒子加速と内部加速のどちらが、放射線帯の電子増加変動に支配的な役割を果たしているかについては、磁気嵐ごとで異なる様相が見られており、その定量的な評価は今後の課題として残された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

以下の発表を行うとともに、名古屋大学大学院工学研究科の修士論文としてもまとめられた。
(学会、研究会発表)
- 2013年5月:日本地球惑星科学連合 2013年大会
- 2013年6月:29th International Symposium on Space Technology and Science
- 2013年11月:第134回地球電磁気・地球惑星圏学会 総会および講演会
- 2013年12月:第10回宇宙環境シンポジウム
- 2013年12月:American Geophysical Union 2013 Fall Meeting
(プロシーディング)
- 第10回「宇宙環境シンポジウム」講演論文集
(学位論文)
データ同化による放射線帯モデルのパラメータ推定に関する研究
(名古屋大学大学院工学研究科 修士論文)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

名古屋大学太陽地球環境研究所の共同研究集会として、2014年3月4日に「電離圏・磁気圏モデリングとデータ同化」を名古屋大学において開催し、約20名の参加があった。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

外山 晴途

名古屋大学