平成71995)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

7−共研−15

専門分類

1

研究課題名

因子分析における推定量の漸近挙動と推定方式の関係

フリガナ

代表者氏名

イハラ マサモリ

猪原 正守

ローマ字

所属機関

大阪電気通信大学

所属部局

情報工学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

因子分析における独自分散推定量のアンダーバイアス傾向と不適解発生の関係は平成5年度日本数学会秋季大会において柳本武美氏が最尤法における一般的な推定方式との関係で指摘した。ここでは,その理論的真偽を明らかにすると同時に,因子分析に活用できる一般的な推定方式との関係において漸近バイアスを解析的に明らかにし,有限標本におけるその影響についてモンテカルロ実験により検証する。


因子分析法における独自分散の最尤推定量と一般化最小2乗推定量の1/n**2項までの漸近バイアスを展開し、大規模なシミュレーション実験によるバイアスとの比較を行った。結果としては、漸近バイアスの主項によって精度よくバイアスが近似できることを示した。また、Ihara & Kano(1984)によるモーメントを活用した独自分散推定量に対する漸近バイアスの主項(1/n項)を求め、それが確率1で負であることを示し、因子分析における不適解問題との関係について言及するとともに、シミュレーション実験によって最尤推定量のバイアスに比較してIhara & Kanoの推定量のバイアスが小さいことを示唆した。
今後の研究として、独自分散推定量の各種推定法式に対する漸近バイアスの比較を行うと同時に、何故最尤推定量の漸近バイアスが大きくなっているのかを定性的に示す必要がある。また、それを通じて、バイアスを修正するための方法を提示することが必要である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・猪原正守、因子分析における独自分散推定量の漸近バイアス、日本行動計量
学会、1995,9,12
・猪原正守、因子分析における最尤推定量の漸近バイアス、統計研究部会(多変
量解析の理論と実践),1995.7,25

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

これまで因子分析における不適解の発生原因は,モデルの識別性と標本変動が中心に検討されてきた。一方,Ihara&Okamoto(1984,Stat.prob.letter)は,とくに小標本の際の不適解発生原因のひとつとして推定方式も大きな要因であることをシミュレーションによって指摘し,Ihara(1985,Math.Japonica)は,3変数1因子モデルにおける独自分散推定量の漸近バイアスとの関係によって推定方式による影響を論じた。近年,統計数理研究所教授である柳本武美氏最尤推定法がもつ独特な推定機構によって独自分散推定量が過少評価されている可能性を示唆している。それは,もしモデルが過剰な因子数を有していても最尤法のもつ独特な推定機構によって不適解発生を犠牲にしてモデルを当てはめるという危険性を指摘していることになる。こうした問題を解決するためには,推定方式と漸近方式と漸近バイアスの関係を理論的かつ実験的に解明することが必要不可欠である。以上のことから,最尤推定方式のもつ独特な推定機構に関する最先端の一般理論を展開している柳本教授との共同研究によって理論的な側面を解明すると同時に,統計数理研究所に併設された高速計算機活用による大規模シミュレーション実験によってその小標本における影響を明らかにする。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柳本 武美

統計数理研究所