平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2007

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

海洋データ同化システムに用いる誤差情報の高度化に関する研究(1)

フリガナ

代表者氏名

フジイ ヨウスケ

藤井 陽介

ローマ字

Fujii Yosuke

所属機関

気象庁気象研究所

所属部局

海洋・地球化学研究部第2研究室

職  名

主任研究官

配分経費

研究費

40千円

旅 費

13千円

研究参加者数

6 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

[本研究の目的]グラフィカルモデルの利用、及び、並列アンサンブル計算による統計情報の作成により、海洋データ同化システムの高度化を行う。

[本研究の成果]
1.グラフィカルモデルの利用に関して
本研究では、1度格子の海面水温データを海洋データ同化システムで同化するデータとして利用するため、グラフィカルモデルを利用して誤差分散共分散行列を作成することを目指している。本年度は領域分割して反復的に推定する方法の開発を継続し、また並行して1度刻みのデータからの誤差共分散行列の推定を行った。後者の結果として、条件付き独立でない変数の近傍範囲を56近傍、60近傍、68近傍とした場合についての推定値を得た。情報量規準に基づき推定値の解析を行ったところ、近傍範囲をより拡大すべきことが分かったため、現在は80近傍の範囲での推定を進めている。

2.並列アンサンブル計算による統計情報の作成について
 本研究では、変分法を用いたデータ同化システムにおいて、並列アンサンブル計算により、最適化と同時に解析誤差統計情報を作成し、その後のデータ同化計算に利用することを目指し、まず、準ニュートン法で、ヘッセ行列の逆行列を近似的に計算する前に、それまでのイタレーションで算出された探査方向ベクトルの共役独立化を施すという改良を行った。さらに、最適化の過程で得られる情報から解析誤差分散共分散行列を計算する手法を開発し、1次元の線形移流拡散モデルを用いて、少なくとも観測数のイタレーションを行えば、解析誤差が正確に求まることを確認した。続いて、ヘッセ行列が近似的に等しくなるような複数の評価関数について、探査方向や勾配の情報を共有することにより、その最適化の時間が短縮できる並列準ニュートン法の開発を行った。本手法を用いれば、線形の場合、理論的には多くても観測数をメンバー数で割った数のイタレーションで最適値と解析誤差分散共分散行列が求まるはずであるが、そのことが線形の1次元移流拡散モデルで観測数が少ない場合に成り立っていることを確認した。また、4次元変分法海洋データ同化システムにも適応し、メンバー数を増やせば最適化の時間が短縮されることを確認した。今後は、大規模な同化システムでの本手法の利用可能性について更なる検証を行い、さらにアンサンブル予報により誤差統計を取得する方法と組み合わせることにより、本手法の更なる高度化を図る予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Ueno, G. and N. Nakamura (2016): Bayesian estimation of observation error covariance matrix in ensemble-based filters, Q. J. R. Meteorol. Soc., accepted to appear.

Usui, N., Y. Fujii, K. Sakamoto, M. Kamachi (2015): Development of a Four-Dimensional Variational Assimilation System toward Coastal Data Assimilation around Japan, Mon. Wea. Rev. 143(10), 3874-3892.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本研究では、以下の研究会を行った。

タイトル:データ同化における誤差統計情報の取り扱いに関する研究会
日時:2015年6月9日 11:00-17:30 場所:統計数理研究所
内容:・準ニュートン法による解析誤差の見積
   ・並列準ニュートン法の開発に向けて
   ・インプリシット粒子フィルターについて
参加者数: 10人程度
    

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

碓氷 典久

気象庁気象研究所

倉賀野 連

気象庁気象研究所

土谷 隆

政策研究大学院大学

広瀬 成章

気象庁気象研究所