平成192007)年度 若手短期集中型研究実施報告書

 

課題番号

19−共研−3008

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

5

研究課題名

微細溝加工を施した鉛直平板を流れ落ちる液膜流の非線形ダイナミクス

フリガナ

代表者氏名

アダチ タカヒロ

足立 高弘

ローマ字

ADACHI Takahiro

所属機関

秋田大学

所属部局

工学資源学部機械工学科

職  名

講師

配分経費

研究費

40千円

旅 費

100千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究では,エネルギーの有効利用や環境保全対策の一つとして注目されている吸収式冷凍機に着目する. この吸収式冷凍機は,排熱を利用できるので地球環境にもやさしいという利点がある. 一方で,熱源駆動の熱交換システムであるため装置の大型化や起動性能が悪いなどの欠点を持ち,さらなる改良が求められている. 特に,吸収器の改良は装置の小型化,低コスト化に繋がるため重要である. そこで,本研究では,プレート式吸収器に着目し,プレートを流下する液膜流の熱輸送特性を数値計算により明らかにする.

平板上を流れる薄い液膜流れでは,固体壁に接していない側では自由表面となっており容易に波が発生する.このような波動現象や液膜を介した熱輸送現象は,非線形現象の代表的な例である.工学的には,このような波を人為的に誘起して伝熱を促進させる目的から平板上に微細加工を施すことが行われる.本研究では,平滑面や微細加工を施した平板上を流れる液膜流について数値計算を行い,数値データを集め,得られた結果の統計数理解析を行うことで,液膜流の表面物性および熱輸送特性と微細加工のピッチ等との関係を明らかにすることが目的である.

平成19年度は,計算プログラムの高速化に取り組んだ.本研究では,有限差分法を基にHSMAC法とVolume of Fluid(VOF)法とを用いた二次元数値解析コードを用いて計算を行っている.本計算プログラムでは,気相と液相が共存する気液二相流れを取り扱っており,気液界面が計算の進行につれて変化する移動境界値問題となっている.プログラム中では,この界面での位置決定や境界条件の設定等で複雑な条件分岐を行っており,そのことが並列化やベクトル化の阻害因子になっている.その中でも,圧力に関するポアソン方程式の反復計算では,界面での境界条件を設定する必要があり,全体の約40%の計算時間を費やしている.この部分をMPIを用いて高速化することに取り組んだ.その結果,この部分では反復計算が収束するまでの計算回数が非常に多く,その都度並列化で分割した領域間の境界情報に関する通信を必要とするために,並列化の効果が十分に得られないということが分かった。しかしながら,この部分の高速がうまく行かないと効率の良い計算ができないため,今後さらに新しい工夫を取り入れて改良を行う必要がある.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1, Takahiro Adachi : Heat Transfer of Liquid Film Flow Falling down Vertical Grooved Plates, Proceedings of the 16th International Symposium on Transport Phenomena(Aug. 29- Sep. 1, 2005, Prague, Czech Republic) CD-ROM.

2, 人見健太・足立高弘:矩形溝を有する平板を鉛直落下する液膜の流れと熱伝達,日本機械学会熱工学コンファレンス2005講演論文集(2005)pp.191-192.

3, 足立高弘,人見健太,宮崎大輔:VOF法による気液二相流れと熱伝達の数値シミュレーション,東北大学
情報シナジーセンター大規模科学計算システム広報 SENAC(2005)38巻pp.37-48.

4, 足立高弘, 人見健太:VOF法による気液二相流れと熱伝達の数値シミュレーション(第2報),東北大学
情報シナジーセンター大規模科学計算システム広報 SENAC(2007)40巻pp.57-67.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

杉本 連

秋田大学

中野 純司

統計数理研究所