平成202008)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

20−共研−14

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

政策の感染症拡大に与える影響の評価

フリガナ

代表者氏名

マツダ シンタロウ

松田 慎太郎

ローマ字

Matsuda Shintaro

所属機関

筑波大学

所属部局

大学院システム情報工学研究科リスク工学専攻

職  名

修士1年

 

 

研究目的と成果の概要

 交通機関を実装したエージェントシミュレーションを実行し、その結果の考察をした。基本的な目的と方法は昨年度のモデルと同じであるが、感染計算の計算規則を変更した。
 旧モデルはある一定範囲内の感染者数を元に感染リスクを設定し、それと個人の抵抗値(感染に対する抵抗力)を比較した感染計算を行っていた。集団内の感染者数が多い程感染率が高まるという仕組みだが、これは感染リスクを集団に基づく値として使い回しているので、ある意味でマクロな量であり、真の意味でのエージェントモデルとしては適切でなかった。
 今回のモデルでは感染リスクというマクロな量を廃止し、一人の感染者に対し、その感染範囲に存在する各エージェントに感染計算を行った。集団内に感染者が多い程感染リスクが高まるという旧モデルの概念は、感染者が多い程感染判定が増えることで代用している。
 この変更により、感染経路の観察が可能になった。感染症伝搬について、ある特定のエージェントが多数の被感染者に感染を引き起こす(このエージェントをスーパースプレッダーと呼ぶ)ことが確認されているが、この事についての考察を行った。
 性感染症など各エージェントの繋がりが密な場合、エージェント同士のリンク数はべき乗分布に従うといわれている。しかしこのモデルは感染力の強い空気感染を想定したものであるので、リンクは一様に近い。しかしその状態でも、抵抗値が一様乱数に従う場合、感染者の二次感染者生産数の分布は指数分布を示した。また、感染者の二次感染者生産数の分布は抵抗値の分布と相関がある事が分かった。
 なおこのモデルと研究結果は日本シミュレーション学会大会(2009年6月11日(木)〜13日(土))で発表する予定である。