平成222010)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

22−共研−1005

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

8

研究課題名

データ同化手法を用いた生態系における炭素循環過程の解明

フリガナ

代表者氏名

ヨコザワ マサユキ

横沢 正幸

ローマ字

YOKOZAWA, Masayuki

所属機関

農業環境技術研究所

所属部局

大気環境研究領域

職  名

上席研究員

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本研究は生態系と大気との炭素交換、植物のバイオマス生産、土壌と大気との炭素交換、植物、土壌における炭素貯留量、および系内外の気温、湿度、土壌水分などの物理環境データ群に対して生態系炭素循環モデルによるデータ同化を行うことにより、生態系における炭素循環過程を不確実性の幅を含めて定量化することを目的とする。
 陸上生態圏における土壌は、非常に多くの有機物を蓄積しており、この土壌炭素分解速度の環境変化に対する応答は、将来の気候変動予測において大きな関心を集めている。ほとんどの土壌炭素動態モデルは、土壌有機物の基礎分解速度が異なる複数のコンパートメントを含んでいるが、温度変化に対する分解率の変化は、どのコンパートメントでも同一であると仮定されている。しかしながら、多くの実験的研究は、土壌有機物の基礎分解率と温度変化に対する分解率変化量は同一ではないことを示唆している。しかし、土壌有機物の基礎分解率と温度変化に対する分解率変化量の関係は、研究によって様々であり、統一的な見解を得ていない。そこで、土壌有機物の長期観測データをベースとして、最もよく利用されているモデルのひとつであるRothamsted Carbon model (RothC) のパラメータをベイズ推定することによって、基礎分解率と温度変化に対する分解率の変化量の関係を検証する。ただし、対象とする観測データは長期にわたるデータであるため、観測期間にわたって同一値をとるとは考えられないパラメータもモデルには含まれている。この問題を解決するために、我々はパーティクルフィルター法とM-Hアルゴリズムのハイブリッド法の適用を試みた。結果として、土壌分解率が最もコンパートメントは、温度変化に対してより低い感受性を示す結果が得られた。この結果は、単純なアレニウス式から予測される結果と一部合致する。また、土壌の窒素含量が多くなるほど分解率が低下することが示唆された。窒素含量が増加することによって、徐々に酸性度が増していき、土壌有機物の分解速度に抑制がかかっている可能性がある。
 以上の結果をまとめて、国際誌 Soil Biology and Biochemistry に投稿した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表
横沢正幸, 小野圭介, 櫻井玄, 戸田求 (2011) データ同化による生態系の環境応答の解明:フラックス、有機物分解および植生構造, 日本農業気象学会2011年全国大会講演要旨, 120
横沢正幸, 中河嘉明, 原登志彦 (2011) 植物個体群における個体間競争の時空間ネットワーク解析, 日本物理学会講演概要集 第66回年次大会, 66(1), 353
M. Yokozawa, G. Sakurai, T. Iizumi (2010) Climatological sensitivity analysis of crop yield to changes in temperature and precipitation using particle filter, 2010 AGU Fall Meeting Personalized Itinerary Planner and Abstract Book, GC23C-0943
G. Sakurai, M. Jomura, S. Yonemura, T. Iizumi, Y. Shirato, M. Yokozawa (2010) Bayesian inference of decomposition rate of soil organic carbon using a tumover model and a hybrid method of particle filter and MH algorithm, 2010 AGU Fall Meeting Personalized Itinerary Planner and Abstract Book, B41H-0418
櫻井玄, 上村真由子, 米村正一郎, 飯泉仁之直, 白戸康人, 横沢正幸 (2011) 土壌有機炭素分解過程における温度感受性の推定-Roth-C モデルパラメータの逆推定-, 日本農業気象学会2011年全国大会講演要旨, 60

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

中川 嘉明

筑波大学

廣田 充

筑波大学