平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2034

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

防災意識から見た地域密着型自主組織の活性化に関する調査研究

フリガナ

代表者氏名

パク ヨスン

朴 堯星

ローマ字

Park Yoosung

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

2011年3月11日発生した東日本大震災では、津波が主な被害因であった。しかし地震の被害の原因として、家屋の倒壊も軽視できない。1995年に発生した阪神・淡路大震災では、直接死者数約5500名のうち、およそ9割の死因が家屋の倒壊・損壊による圧死・窒息死であった。その原因の一つとしては、倒壊した家屋の大部分が昭和56年の建築基準法改正以前に建てられたものであった点がある。
阪神・淡路大震災を契機に、国や自治体では「新耐震基準」以前に建築された、いわゆる既存不適格建築物と呼ばれるような木造建築物に対する耐震診断や耐震補強に関する支援が取り組まれている。しかし、その手段として国や各自治体で始められた助成金制度や税制優遇措置をはじめとする住宅耐震化支援政策は、未だ十分な成果を挙げているとはいえない。本研究では、世帯主が耐震補強工事を選択するに至る選択プロセスを解明することをその目的とする。

 そこで本研究では、坂野・大石(2009)が実施した質問紙調査から得られたデータを用いて、二次分析に行っている。坂野・大石の調査票では、主に、(1)リスク認知の尺度、(2)自己効力感の尺度、(3)コスト感、(4)助成制度認識度、(5)その他の基本属性(年収、持ち家可否など)について尋ねている。調査は、住宅地図からの無作為抽出した、横浜市神奈川区の3000世帯を調査対象とし、2008年1月18日〜1月25日に行ったものである。有効回収率は、26.1%(782/3000通)である。ただし、耐震補強工事を実施するにあたっては、借家主には工事実施の権限がない。したがって、本研究では、持家である、かつ、旧耐震基準の木造世帯である、という二条件を満たす254世帯を分析対象とした。

 本研究では世帯主のリスク認知と自己効力感という心理的な側面に着目し、リスク回避行動としての耐震補強工事の選択プロセスの解明を試み、世帯主が耐震補強工事を選択するまでのプロセスについて検証を行った。具体的には、耐震補強工事の行動変容を被説明変数とした共分散構造分析を行い、「地震知識」、「制度知識」、「被災体験を聞いたことがある」、「耐震補強工事の体験を聞いたことがある」、「効力感」のこれらの要因が「行動変容」に及ぼす影響を確認している。
 その結果、行動変容に対しては、「耐震補強工事の体験談を聞いたことがある」のみが有意な正の直接効果を示していることが確認された。このことは、まさにBandura(1979)が指摘していた代理体験の効果を表していることを意味する。つまり、自主的に耐震補強工事を行うように促すためには、そのような代理体験の内容を聞くことができる場を設けてあげることが求められると考えられる。ただし、制度知識および効力感は行動に対して直接的な効果を及ぼさないが、間接効果まで見ると、制度知識が効力感を向上させ、そのことによって、他者の工事体験に関する情報に敏感になり、最終的に耐震補強工事の実施に至るという一連の因果構造を得られることができた。
 以上をふまえ、本研究の一般性を確かめるため、現在、本研究では横浜市以外の別の自治体を対象とした調査を引き続き、計画しているところである。対象としては、災害時の倒壊危険性の高い東京都下町地域を検討し、調査実施への依頼を進めているところである。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本研究は、現在日本計画行政学会への投稿を予定しているところである。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本テーマに関する研究会は開催していない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

堂免隆浩

一橋大学