平成212009)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

21−共研−1002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

3

研究課題名

脳神経活動データの統計的解析による情報抽出

フリガナ

代表者氏名

コマツヒデヒコ

小松 英彦

ローマ字

Komatsu Hidehiko

所属機関

自然科学研究機構

所属部局

生理学研究所生体情報研究系感覚認知情報研究部門

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

どのような脳の活動によって知覚が生じ、適応的な行動の制御が行われるかを解明することは、高次脳機能の神経科学の重要な目的である。しかし、そのような機能を担う大脳神経回路の働きには不明な点が多い。本研究では、視知覚と視覚的行動の仕組みを調べるための生理学実験に用いられる刺激と計測された脳活動データの性質を統計科学の観点から分析し、このような実験から意味のある情報を抽出するためにどのような数理解析を行うことが最適であるかを検討する。
本年度は生理学研究所において人を被験者として素材感の識別に関する脳活動をfMRIで計測した実験の結果について、検討を行った。コンピュータグラフィクスで作成した8つの異なる素材(金属、ガラス、セラミックス、毛、石、木目、樹皮、皮革)の物体画像を呈示し、被験者が素材を識別できることを確認すると共に、さまざまな項目について感性的判断を行ってもらった。それぞれの素材の物体の形状は同じにしてあり、形の影響をできるだけ排除した。この心理テストの結果をSD法で解析し、素材間の関係を分析した。次に、被験者が各素材の物体画像を見ている時の脳活動をfMRIで計測し、初期視覚野および腹側高次視覚野と背側高次視覚野のそれぞれの領域で、素材をどの程度識別できるかをSupport Vector Machine(SVM)によって検討した。その結果、これら初期視覚野から高次視覚野の広い範囲で有意に識別できることがわかり、素材を識別する情報は視覚野に広く分布することが示された。次にそれらの活動が、空間周波数や色成分などの画像の物理的な特徴と心理的な判断のいずれによく相関しているかを調べるために、素材間の活動の類似度をさまざまな視覚野について求め、それらを画像的・心理的な素材間の類似度と比較した。その結果初期視覚野の活動は画像特徴と相関が高く、腹側高次視覚野の活動は心理判断と相関が高いことが示された。このような研究内容について統数研で紹介し、解析方法の問題点や、よりすぐれた方法の可能性について議論を行った。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)


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研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

伊藤 南

自然科学研究機構

伊庭 幸人

統計数理研究所

鯉田 孝和

自然科学研究機構

郷田 直一

自然科学研究機構