平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2038

専門分類

7

研究課題名

脊椎動物におけるゲノム進化の数理科学的研究

フリガナ

代表者氏名

ワダ ヤスヒコ

和田 康彦

ローマ字

Yasuhiko Wada

所属機関

佐賀大学

所属部局

農学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

遺伝子工学の医学薬学や畜産業への応用を考えるとき、遺伝子のクローニングやマッピングは今や必
須の技術となっている。しかし、当該動物種の全遺伝子について独自にクローニングとマッピングを行
うには膨大な経費と時間がかかるために現実的ではない。そこで、ゲノムの全塩基配列が解明されつつ
あるヒトや、詳細な連鎖地図が整備されているマウスなどの情報をもとに、各動物種における各遺伝子
の位置と構造を予測することができれば大いに有効ではないかと考えられる。
 昨年度までに、マウスゲノム上の遺伝子数の推定を行い、マウスゲノム上の重複領域データベースや
数種の脊椎動物における遺伝子ファミリーデータベースを作成し、ブタ、ウシ、ニワトリゲノム上での
反復配列についての数量的な解析を行ってきた。
 本年度は、ブタ、ウシ、ニワトリおよびウサギ、アフリカツメガエルの5種について、ゲノム上での
反復配列についてのより詳細な解析を実施した。Genbankデータベースから5kbp以上のゲノム塩基配
列を抽出し、RepeatMasker V2を用いて反復配列を検索し、RepBase3.1に登録されているコンセンサス
配列との間の塩基置換率をTajima and Nei(1984)を用いて推定した。アフリカツメガエルではSINEは
存在せず、LINEとDNAエレメントあわせてゲノム配列の0.3%を占めたにすぎなかった。ニワトリでも
SINEは存在せず、ゲノム配列の4%程度のLINEとわずかのDNAエレメントが検出されただけであった。
一方、哺乳動物においてはSINE,LINEをはじめとして数多くの反復配列が存在し、ブタにおいてはSINE
が14.3%、LINEが13.8%、ウシにおいてはSINEが9.3%、LINEが21.0%、ウサギにおいてはSINEが8.9%、
LINEが9.9%を占めていた。このように哺乳動物とその他の脊椎動物において散在性反復配列のゲノム
上での存在比率が大きく異なることは、哺乳動物において散在性反復配列の拡散のための何らかのシス
テムが存在するのではないかと疑われる。
 コンセンサス配列との塩基置換率の度数分布表を見ると、SINEはブタとウシともに10-20%のところ
にピークがあった。これを偽遺伝子の塩基置換率のデータに当てはめて反復配列の重複が起こった年代
を推定すると、そのピークは2億2000万年前から4億3000万年前と推定された。一方、LINE
はブタ、ウシともに30-40%にピークがあり、これは6億5000万年前から8億7000万年前と推
定された。一方、ニワトリのLINEの塩基置換率のピークは20-30%で、4億3000万年前から6億5
000万年前と推定された。各動物種に共通なLINEについて調査したところ、CRIがニワトリ、ウシ、
ブタに共通に見られたが、ウシとブタにおける検出数は少なかった。一方、LINE1およびLINE2ファミ
リーは哺乳動物に共通に数多く存在していることが確認された。
 これらの結果より、散在性反復配列は脊椎動物のゲノム領域の進化を研究する時に、有効なマーカー
となりうることが明らかとなった。また、哺乳動物とその他の脊椎動物において散在性反復配列の生成、
保持機構に大きな差異が存在することが強く示唆された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Wada,Y(2002)"An exhaustive search for tandem repeats and long
duplicated chromosomal regions within the mouse genome",Journal of
Animal Genetics 30,3-10.
Wada,Y and Shigemori T(2003)"In silico analysis of repeat
sequences of pig,cattle and rabbit genome",In preparation.
Wada,Y(2002)"Duplicated Mouse Chromosomal Regions",
http://genome.ag.saga-u.ac.jp/

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏木 宣久

統計数理研究所

岸野 洋久

東京大学