平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−94

専門分類

8

研究課題名

Exponential Autoregressive model にもとづくマクロ経済時系列分析

フリガナ

代表者氏名

テルイ ノブヒコ

照井 伸彦

ローマ字

所属機関

東北大学

所属部局

経済学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究ではマクロ経済データに適した非線形時系列モデルの構築およびその応用を目的とする。具体的には、非線形微分方程式にもとづく決定論的な非線形経済動学の諸理論に不確実性を導入し、そのための統計的モデルをExponential Autoregressive modelにもとづき構築しその応用をはかる。


これまで経済理論の上で、景気循環を非線形微分方程式によって表現し、景気の上昇と下降のサイクルに非対象性をもたらすリミットサイクルの概念が議論されてきたが、その理論的展開から実証分析可能なようなモデルへの変換およびその統計的検証は行われてこなかった。本研究では非線形微分方程式の離散化を目指しリミットサイクルの存在条件を明示的にモデルの係数の制約をしてあらわれるExponential Autoregressive(ExpAR)モデルを扱った。
GNP、失業率などのマクロ経済時系列の定常性への変換モデルとして、決定論的トレンド回りで定常(Trend Stationary(TS)) および差分をとったものが定常(Difference Stationary(DS))の2種類の定常性のモデルを考慮し、それぞれExpARモデルにあてはめ、マクロ経済時系列にリミットサイクルが存在するか否かを統計的に推測した。
リミットサイクルの存在に関する必要条件および十分条件は、非線形時系列モデルの係数パラメーターに関する非線形な制約として表されており、ベイズ統計学の手法によりそれらの諸条件に対する統計的推測の理論的展開および手続きを与えた。実証分析としてアメリカのGNP(季節調整済み四半期データ:1960年第1四半期−1989年第4四半期)及び失業率(季節調整済み月次データ:1960年1月−1979年12月)に関して、ExpARモデルをあてはめ、データからパラメーターの推定を行い、リミットサイクル存在条件に関する命題が個別あるいは同時に成立する事後確率を評価した。
その結果、TSモデルにたいして、GNPに関しては、必要条件:0.015、十分条件:0.179そして必要十分:0.002と評価され、失業率に関しては、必要条件:0.302、十分条件:0.130、そして必要十分:0.031と評価された。両者ともリミットサイクルの存在を支持する程ではないが、失業率の方が理論モデルと整合的といえる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

照井伸彦、Bayesian inference on an ExpAR model for nonlinear time series、第61回日本統計学会講演報告集、P76-78.

照井伸彦、Bayesian inference on an ExpAR model for nonlinear time series、日本統計学会('93/7/21)
照井伸彦、Limit cycle and multistep prediction in an ExpAR model, International Symposium on Exploration of Informational Aspects of Baysian Statistics.('93/12/21)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

van der Pol型やLord Rayleigh型の非線形微分方程式にもとづくマクロ経済学の景気循環論で展開された決定論的なLimit Cycleの諸議論を基礎にして、非線形微分方程式の離散化を明示的にめざし、Limit Cycleの存在に関して興味深い意味付けをもつExponential AR modelをマクロ経済分析に適した形に拡張、修正する。
次にそのモデルを使い日本をはじめOECD主要国のマクロ経済データを用いて実証分析を行う。これらの非線形経済動学の議論は、1950年代から景気の非線形循環を分析する方法として展開されてきたが、そこに不確実性を導入できず理論のみでとどまっていたものである。
Exponential AR modelの開発者である尾崎教授の研究協力の必要性は研究目的より明らかであり、これにより本研究は最も効果的に行われる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾崎 統

統計数理研究所