平成142002)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

14−共研−1017

専門分類

7

研究課題名

高精度行動応答解析

フリガナ

代表者氏名

ハナイ カズミツ

花井 一光

ローマ字

Hanai, Kazumitsu

所属機関

京都府立医科大学

所属部局

医学部物理学教室

職  名

教授

所在地

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研究目的と成果(経過)の概要

無脊椎動物ヒドラは還元型グルタチオンで一連の摂食行動応答を示す。これら一連の行動応答のうち,触
手球形成応答は極微量の生理活性ペプチドの存在下で行動応答の様子が微妙に変化する。この変化を利用す
ると、生理活性ペプチドに対する高感度バイオアッセイ法が構築できるが、そのときの応答の判定をコンピ
ュータによる時系列解析で自動化する。
 こ応答をビデオカメラで写して,その画像をコンピュータに取り込み,各時刻での画像特徴量を算出し,
得られた画像特徴量を時系列解析に供する。コントロール応答(C応答)、生理活性ペプチド存在下での応答
(E応答)を全部解析して得られた平均自己共分散関数から、Yule-Walker法でAICが最低になるように
ARモデルを決定した。このときに、C応答、E応答別々に解析した場合と、区別せずに解析した場合とのAIC
を調べてみると、別々に解析する方がより小さなAICのARモデルが得られることがわかり、これらの応答
は区別できるとすることは合理的であるという結果が得られた。一方で、このAIC差による弁別はデータの
数を増やすと非常に鋭敏になり、C応答同士、E応答同士など同じグループに属する実験間の違いまで検出し
てしまうことが分かった。これは、検出されている違いが、(薬物存在下での応答かどうかという)実験条件
の違いによる応答の違いというよりは、(実験が行われた月日の違いや供された個体の違いなど)各実験が行
われた些細な違いを弁別してしまっていることを示唆している。
 しかし、この解析を進める過程で、各時刻で得られる画像特徴量(全部で37種類を検討)を複数個組み
合わせると、C応答かE応答かで最適ARモデルの次数が大きく違う組み合わせがあることが分かった。従っ
て、これを利用すれば、応答の判定ができることが分かった。次に薬物の濃度をかえた時の効果を調べてみ
ると、薬物の濃度を下げていくと、ある濃度以下ではこの次数の差が検出されなくなり、ARモデルの次数で
薬物の有無を判定するのは有効な方法であることが示唆された。
 一方では、この解析では一定の条件下での膨大な実験データが必要であり、現実的には使いにくいという
問題がある。今後さらに解析法やデータを集める方法を工夫する必要があることも明らかになった。
また、この手法の有効性を調べるためにアリのコロニー認識能力を行動テストで調べる実験を開始した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

花井一光、ヒドラのグルタチオン行動応答の多変量時系列解析、日本味と匂学会誌 Vol.9(No.3)
pp 313 ? 316、2002

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所