平成142002)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

14−共研−1013

専門分類

6

研究課題名

ランダムな不均質を含んだ地下構造の地震波によるイメージング

フリガナ

代表者氏名

ニシザワ オサム

西澤 修

ローマ字

Osamu NISHIZAWA

所属機関

独立行政法人 産業技術総合研究所

所属部局

地圏資源環境研究部門 物理探査研究グループ

職  名

主任研究員

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地震波形は地下構造に関する重要な情報を含んでいる。波形を解析して地下構造を決めることができる。
実際に決められる地下構造はある大きさの構造までで,それより細かい構造は分解能以下の構造となり,この
部分はランダムとみなされている。ランダム構造を反映して地震波形にはランダムなゆらぎが現れる。このよ
うなランダムな波形ゆらぎはこれまでノイズと考えられ,あまり研究されていなかった。このことを波長の観
点で見ると,決定された地下構造は不均質の長波長成分,分解能以下の構造は短波長成分となる。実際には分
解能以下の短波長成分が地震波形に与える影響は無視できない。たとえば,地震波速度トモグラフィーでの観
測値とモデル計算値との間の走時誤差は偶然の不一致ではなく,地下のランダム不均質構造を反映したもので
ある可能性がある。これは,分解能以下のランダム構造からのランダムな回折現象あるいは散乱が,実際のデ
ータ処理では無視できないことを示している。このため,短波長のランダム不均質と地震波のランダムなゆが
みとの間の関係を定量的に研究する必要がある。この研究は,ランダム不均質が地震波のゆがみに及ぼす影響
を定量的に研究し,地震波を用いた地下構造探査の精度改善に役立てることを目的とする。
 ランダムな不均質構造を含む縮尺モデルを作成し,室内実験による地震波伝播モデル実験を行った。14年
度はS波のデータを取得し,ランダム不均質構造がS波の振動に及ぼす影響を調べた。モデル震源におけるS
波の放射パターンを実測し,データ解析の基礎資料とした。つぎに,不均質の強さが異なる物質を用いてS波
伝播モデル実験を行った。S波は震源では特定方向に分極した振動を発生しているが,ランダム不均質媒質中
を伝播するときに分極に乱れが生じ,観測点では他の分極成分の混じった振動が観測される。分極の乱れや散
乱による波形の乱れを定量的に評価し,ランダム不均質と地震波との間の関係を明らかにした。
 媒質のランダム不均質は,弾性波速度分布の空間的平均値からのずれ,すなわち「弾性波速度の空間ゆらぎ」
の自己相関関数あるいはスペクトルで表すことができる。実験には天然の岩石試料を用い,実測されたゆらぎ
は指数関数で表現できた。ゆらぎの強さが異なるふたつの岩石を伝播する地震波(高周波弾性波)を観測し,
振動三成分の結果から,表面振動を三次元的に復元する。この結果をもとにS波のゆらぎを評価したところ,
散乱の弱い領域でもS波は大きくゆがめられていることがわかった。このことはS波がP波に比べランダム
不均質による影響を強く受けていることを意味しており,地震波探査や地球物理学で重要な問題となる。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文
Y.Fukushima,O.Nishizawa,H.Sato,and M.Ohtake,Laboratory study on scattering characteristics
of shear waves in rock samples.BSSA,93,253-263,2003.
学会発表
西澤 修・北川源四郎,短波長不均質構造が地震波に及ぼす影3:多変量ARモデルにもとづく散乱波の解析,
地震学会秋季大会,要旨P098
福島 洋・西澤 修・佐藤春夫・大竹政和,不質構造が地震波に及ぼす影響4:S波particle motionのゆ
らぎ,地震学会秋季大会,要旨A44
福島 洋・西澤 修・佐藤春夫,ランダム不均質媒質中を伝播するS波の波形ゆらぎについて,物理探査学
会第107回学術講演会,講演要旨#15
レーザードップラー振動計による圧電素子放射パターンの計測,物理探査学会第107回学術講演会,講演要
旨#14
多変量ARモデルにもとづく地震波解析:モデル実験,物理探査学
会第106回学術講演会,講演要旨#22
松島 潤・西澤 修,ランダム不均質構造における反射法地震探査データ処理 ?2次元数値モデル実験によ
る検討?,物理探査学会第106回学術講演会,講演要旨#19
ホームページ
モデル実験の方法,研究の意義など
http://staff.aist.go.jp/osamu-nishizawa/model/index.html
地殻のランダム不均質構造についての解説
http://staff9aist.go.jp/osamu-nishizawa/ldv/hetero_j0.html

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

北川 源四郎

統計数理研究所

松島 潤

独立行政法人 産業技術総合研究所