平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2028

専門分類

6

研究課題名

地球潮汐による応力変化に起因する地震活動の時間変動

フリガナ

代表者氏名

カタオ ヒロシ

片尾 浩

ローマ字

Hiroshi Katao

所属機関

京都大学

所属部局

防災研究所地震予知研究センター

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 大きな地震の後、その断層運動による応力変化によって周辺の地震活動が変動する現象(地震誘発現象)は近年注目を集めている。その応力変化と地震活動との関係の定量化が行われ、それを用いた余震活動予測への応用が試みられつつある。他方、潮汐による応力変化に伴う地震誘発現象に関しても、研究が進められている。
 1995年兵庫県南部地震後数年間にわたり、本震断層に隣接する丹波山地の地震活動が月齢と相関を持って周期的に変動していることが指摘され[片尾, 2002, 地学雑誌]、Iwata and Katao[2006, GRL, 以下IK2006]においては、この周期性が統計的に有意であることが確かめられた。
 ところで、IK2006で用いた点過程モデルの強度関数は、Ogata[1983]の考えに基づくものである。Ogata[1983]は、地震活動の長期的なトレンド及び余震活動などに起因するクラスター性を考慮した上で、地震活動の周期性を調べるモデルとして

    (トレンド)+(クラスター)+(周期性)  

という形式の強度関数を提案している(以下、モデルA)。
 モデルAでは、地震活動の周期性を、トレンド及びクラスター性に対して和の形で与えているが、積の形で与える

    {(トレンド)+(クラスター)}×(周期性)

という形の強度関数も考えられる(以下、モデルB)。そこで、丹波山地における地震活動の周期性を表現するのに、どちらがより適切かについて調べた。両モデルを兵庫県南部地震後4年間の丹波山地の地震の時系列に当てはめ、最適となるパラメータセットを最尤法により求めた。そして得られた最大対数尤度の値からAICを計算することでモデル比較を行った。解析の結果、モデルAのAICに比べ、モデルBのAICの方が5.5小さく、モデルBの方が有意によいモデルであることが分かった。
 月齢と地震活動との相関は、地球潮汐による応力変動の振幅が月齢に伴い変化することによって生じると考えられる。岩石実験等に基づく物理法則から導かれた、応力変動と地震発生率との関係を表すモデル(Dieterich[1994])では、応力変動前の地震発生率に、応力変動量などによって決まる増減率を掛けたものが、応力変動後の地震発生率となる。これは、本研究におけるモデルAよりもモデルBの方に近いものである。このことから、「モデルBの方が月齢と地震活動との相関をより適切に表している」という本研究の結果はもっともらしいと考えられる。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

 論文
 Iwata, T. and Katao, H., Correlation between the phase of the moon and the occurrence of microearthquakes in the Tamba region through point-process modeling, Geophys. Res. Lett., 33, L07302, doi:10.1029/2005GL025510, 2006.

 学会発表
 岩田貴樹・片尾浩, 月齢と丹波山地の微小地震活動との相関の時間変動, 日本地球惑星科学連合2006年大会, S110-004, 2006.

 岩田貴樹・片尾浩, 月齢と微小地震活動の相関に関する点過程解析, 2006年度統計関連学会連合大会, 160, 2006.
 
 岩田貴樹・片尾浩, 月齢と丹波山地の微小地震発生の相関 −改良した強度関数による解析 −, 日本地震学会2006年度秋季大会, P212, 2006.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岩田 貴樹

統計数理研究所

尾形 良彦

統計数理研究所